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皇帝の鶯のodyssのレビュー・感想・評価

皇帝の鶯(1948年製作の映画)
3.0
【物語より美術重視で見るべき映画】

戦後間もない頃のチェコ映画。原作はアンデルセンの『ナイチンゲール』だそうです。

この映画にはセリフがまったく出てきません。といって無声映画ではなく、音楽や効果音はかなり使われているのです。

最初は生身の人間が出てきます。ただし少年と少女のふたりだけ。少年は最初、自室でピアノの練習をしています。室内の調度から、裕福な家庭らしいと分かる。練習に飽きた少年は外に出ます。そこで少女に出会う。少女は誘いかけるようにボールを投げ、少年もいったんはそれを追うのですが、ボールを返すことなく家に戻ってしまう。その少年が夜見る夢がこの映画のメインで、人形劇になっています。その人形の形姿は、少年の部屋に飾られている人形からイメージされたものらしい。

中国清朝の皇帝(辮髪ですから、たぶんそうでしょう)が、たまたま絵本でウグイスを見る。皇帝にはそれが何か分からず、周囲の取り巻きや召使に尋ねるけれど分からない。命令を受けた部下が探し回ると、少女がウグイスを飼っているのに出会う。この少女の人形が、最初に出てくる生身の少女に似ているところがミソです。そして・・・・というふうに話は進みます。

この映画の見所は、しかし筋書きではなく、戦後間もない時代に人形劇を映画化した、その技術力でしょう。人形の動作や、彩り、服装、また室内の背景などは、まさに贅を凝らしたと表現したくなる見事さ。美術や室内装飾、服飾などに興味のある人にはお勧めできる映画だと思います。

ただ、物語的にはやや単調で、短めの作品だからどうにか見ていられますが、私にはちょっと退屈でした。物語より、撮影技術や美術的効果で見るべき映画でしょう。
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