くりふ

かいじゅうたちのいるところのくりふのレビュー・感想・評価

3.5
【獣間学校】

アッパー系ファンタジーデフレの中、このダウナーぶりはいっそ新鮮だと思いますが、ゴジラが上陸する手前で東京湾に座り込み、ぶつぶつ独り言始める、みたいな停滞感を醸すのを、どう受け取るかが分かれ目? でも、東京タワーの影からそんな彼を暖かく見つめるモスラ、みたいな、お笑いなのに不条理なふりする視点も確実にあって、結構楽しめました。

今回、「マックスの穴」は用意されていないので、観客がマックスの心情にどれだけ同期できるかで、受け取るものがかなり違ってしまうと思います。カタルシスは用意せず、彼の微細な心情変化を最大価値とした作品ですね。マックスにとっての大問題を、観客はそうだと思えるかどうか?彼と同世代の、子供達の感想を聞いてみたい。全然伝わってなかったりして(笑)。

「かいじゅう」が子供でも大人でもない、半端な存在なのがポイントですね。マックスはルールのない世界で、自分が世界の中心にいないことを学んでゆく。なかなか実践的なことをやっていて、いい学校入ったじゃん、と思いました。終盤でKWに吐露する台詞にぐっと来ました。わかったじゃん、さあどうする?捨て犬のように母を見上げていた彼の心は、未知の他者を知りどう変わるのか?

原作絵本の1963年仕様を、映画では2010年仕様に変えてあるんですね。やり場のない子供エネルギーを巨大な獣性に変え、獣の世界でガキ大将になり、徹底的に遊び倒すことでそれを昇華する。…というのが原作で見た世界でした。

が、映画版は、獣性よりもお悩みが強大。いくら遊んでも答えは見つからない。恐らく制作陣は、エヴァの時代にマジンガーやってもなあ、と判断したのでは?個人的には、10分位のアニメでマジンガーやっても面白かったと思うんですが。またこのお話は、「ハレとケ」で考えてみても面白いですね。

C・キーナーさんもさすがにお年を召しましたね。昔からけっこう好きでしたが。だからマックスと一緒になって、ストッキング引っ張りたかったです(←コラ!)。「かいじゅう」の中ではKWの歩く後姿、お尻のもこもこが可笑しくて萌えました。

キャロルの風貌は、モーガン・フリーマン演じるドラえもんだ、と思いました。

<2010.1.23記>
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