Sung

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカのSungのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます


マフィアやヤクザではなく野良の悪党の話

隆盛を極め天を仰ぎ始める他の仲間を他所にヌードルスはこのままどこにも属さずどこにも名前を付けてもらおうとは思わなかった。
誰の下にも就きたくないという反抗はこのままマックスや仲間と地に根を張りたかったから。
グループを抜けたヌードルスをマックスは追う。
彼が仰いでいたのはヌードルスだった。マックスが必死で伝っていたのはヌードルスの根だった。自らの根と絡みついた絆。でもマックスは完全に履き違えていた。
根を伝い終えた先は天上でそこにヌードルスはいなかった。
マックスは地に足つかない浮き雲となり、ヌードルスは地の底に追いやられた。そこでヌードルスとの絆を履き違えていたことに初めて気付く。けどもう遅かった。
ヌードルスは地の底に追いやられてもマックスを憎まなかった。なぜならヌードルスは青年の頃から全く変わらない地を踏み締め続けていたから。
縮こまっていると馬鹿にし裏切った挙句にマックスはそれに気付いた。

35年ぶりの二人の再会でマックスが「失うものは何もない」と言ったのが印象的だった。失うものが何もないのは彼ではなく、かつてヌードルスの救いを出し抜いて成功し長官にまで登りつめ恋人や金などヌードルスから何もかもを奪ったマックス、彼がそう語りかけるヌードルス本人が言うべき台詞だったから。でもヌードルスにうまくいかなかったことはあっても失ったものは何もなかった。
ヌードルスは前金をもらい辿り着いた先がマックスだった。
だかヌードルスは殺さず「借りはない」と言う。つまり前金の出元は恐らくマックス本人だということだろう。

そしてマックスはヌードルスの前を通り過ぎるゴミ収集車の影に消える。
35年前のヌードルスが高らかに笑い上げるところで幕は閉じる。
このラストのヌードルスはマックスの偽の焼死体を見た直後だろうと思う。
馬鹿を見たのはマックスだと哀れむように嘲笑う。

ストーリーが巧妙でヌードルスの人格一つ取っても書けない。自分の解釈や感動でさえうまく言葉にできない。全ての伏線というか、時制が前後するのにまっすぐ流れて鮮やかに収束する。お世辞抜きでこんな映画として素晴らしいものを観たことがなかったです。


雲を集めたくはない
根を張りたい

ヌードルスに憧れる
腐ってもいいからこう生き続けたい
マックスと同じように僕も僕の中にヌードルスに共鳴するものがあった。一番大切にしているもの。言葉にならないものをこの映画が確かめてくれる。今この時のはたちの僕が見て良かった。本当に大切だ。
Sung

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