凛太朗

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカの凛太朗のレビュー・感想・評価

4.8
好きな映画10本あげろ!と言われた非常に難しくて、その時々によって変わっちゃうんだけど、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』は、変わらず個人的オールタイムベスト10に入り続けるんとちょうか?と思われる映画です。
何回も観てる映画じゃなくて、15年くらい前に一回だけ観て、凄く心に残りつつ、この度久々に観たんですけどね。
完全版しか観たことないんですけど、229分あるんで観るにはそれなりの時間や集中力が必要ですね。色々と素晴らしすぎて、4時間近くある長い映画だとあまり思わせない点も凄いんですけど。

『ウエスタン』、『夕陽のギャングたち』に続くワンス・アポン・ア・タイム三部作の最終章にして、セルジオ・レオーネ監督の遺作。
レオーネがハリー・グレイの自伝小説的な原作に感銘を受けてから、映画化権獲得の難航などの兼ね合いもあって完成までに10年以上かかった一大叙情とも言える本作。音楽は勿論エンニオ・モリコーネ。

ヌードルスとマックスを中心としたユダヤ系移民のギャングの友情や栄光と挫折を、1923年の少年時代から1933年辺りの青年時代を経て、1968年の老年時代にかけて描いた作品で、アヘン窟でヌードルス(ロバート・デ・ニーロ)がラリパッパになっているところから始まり、ラリパッパな満面の笑みで終わる映画。
つまりこれ、ヌードルスがアヘンの影響で夢想しているだけに過ぎない夢オチ的な映画なんじゃねーか?という解釈もありますが、実際そうかもしれませんし、そうじゃないかもしれません。
そういうオチ云々は置いとくとしても、ヌードルスがアヘンに縋って現実からの逃避行を繰り広げてたのは事実なんやろな。と個人的には解釈しますが、それ故に凄く切ない映画やなと思うんですよ。

少年期のヌードルスやマックスを演じてるのはデ・ニーロでもジェームズ・ウッズでもないですけど、ユダヤ系移民の少年たちが出会って、認められるためかのし上がるためか、それともただ仲良くバカやってたいかのために犯罪に手を染めて行く中で、物で釣って童貞喪失してみたり、デボラ(ジェニファー・コネリー)に恋をしてみたり、覗き穴から見るだけで満足したり、最年少の弟分がギャングに殺されて身を呈して復習したり、もうこの時代だけで1本の映画を観ていたい。
少年たちの笑顔が眩しすぎる!舞台を変えた『スタンド・バイ・ミー』ですよ。

でもこの時代があるから、青年期も老年期も映えるし、逆もまた然りなんですよね。
オレがヌードルスなら、やっぱりアヘン吸って現実逃避して、少年期を美化してほくそ笑んでたかもしれない。憧れと現実は違うものだということは年を取れば取るほど思い知らされるものだと思うから。

エンニオ・モリコーネによる音楽が、マックス以上にイカれてるんじゃなかろうか?と思わせる程にノスタルジックで非常に素晴らしい。The BeatlesのYesterdayのメロディが印象的に使われてるけど、この曲の歌詞を考えるととても切ない。
そしてセルジオ・レオーネですけど、特有の回想シーン多目ながら、従来のマカロニ・ウエスタン撮ってた頃の暴力的だったり極端な描写であったりという特徴は、本作では薄めかもしれない。
だけど構図自体はどこを切り取ってもその殆どが印象的で、セリフではなく画で語り、それでいて4時間近くを飽きさせない手腕は見事で、レオーネの新しい魅力、新境地開拓って感じなんだけど、残念なことにこれが遺作。そういう意味でも悲しいです。
凛太朗

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