スローモーション男

Shall we ダンス?のスローモーション男のレビュー・感想・評価

Shall we ダンス?(1996年製作の映画)
5.0
 本当に素晴らしい映画だった。

周防正行監督による日本中で大ヒットし、社交ダンス🕺💃がブームになるきっかけを作った映画。

 冴えないサラリーマン杉山は、電車の中から見える社交ダンス教室を眺めていた。そこにいる女性に魅了され、社交ダンス教室に通い始める。少しずつ社交ダンスに魅了され大会にまで出場し始める。


周防正行監督は伊丹十三の助監督やってて、その娯楽性を引き継いでますのでこれがヒットしたのが分かります!サラリーマンが社交ダンスをするというアンサンブルなプロットが素晴らしいし、主人公も教室にいた綺麗な女性目当てで参加したが、次第にその面白さに取り憑かれていくのもお見事。

それから周防正行は蓮實重彦のもとで映画論を教わり、黒沢清とも映画を作っていた生粋のシネフィル監督。だからこそ、芸術性も高い。この映画、構図やカメラワークの水準がとても高い。被写体の位置を通して場面説明をしたり、カメラワークで次の意味を提示する辺りが、台詞に頼らない映画の見せ方をしています。

そして、なにより周防正行は小津安二郎の大ファンでデビュー作品『変態家族 兄貴の嫁さん』で『秋刀魚の味』のパロディをしている(残念ながら『変態家族』は観れていません…)。
この映画にも小津リスペクトなシーンやアングルが多数。柄本明と原日出子が向かい合って対話するのはもろ小津ショットだし、「視線」のやり取りが多いこの映画は明らかに小津の映画である「視線」のやり取りを意識してます。

役所広司演じる杉山、草刈民代演じるダンサー舞、そして原日出子演じる杉山の妻。この三角関係のやり取りがこの映画最大のサスペンスではないでしょうか?
大会のシーンはまさに人の眼差しのぶつかり合いです。

あと脇を固める竹中直人、渡辺えり、草村礼子、田口浩正、徳井優なども個性的だし、悪い人が全然いない。
ものすごくベタなストーリーに見えて、すべてが合理的に作られている。これは満点の映画でしょ!!!

今や社交ダンスという文化は日本から滅びてしまったように感じます。ヒップホップ的なダンスよりも誰かと足を揃えて行うこんなダンスも素敵じゃないですかね。

ドリフターズの「ラストダンスは私に」もいいね!