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ひとりぼっちの青春のakrutmのレビュー・感想・評価

ひとりぼっちの青春(1969年製作の映画)
3.6
1930年代の大恐慌時代のアメリカを舞台に、ダンス・マラソンを通じてその時代の人々のメンタリティを描いた、シドニー・ポラック監督のドラマ映画。原作はホレス・マッコイの同名小説(邦題『彼らは廃馬を撃つ』)。

まずは、とにかくダンス・マラソンという珍妙なイベントがインパクト大。イベント終盤で残っているカップルたちがぐったりしたまま踊っている(というか動いているだけの)姿がシュール。ダンス・マラソンは実際にこの時代にアメリカ各地で開催されていたイベントで、YouTubeでもその様子を見ることができるが、本当にぐったりしている。賞金が獲得できる最後の一組になるまで何十日も踊り続ける(一応、2時間ごとに10分間の休憩があるが)という現代では絶対に不可能なイベントなので、今見るとどうしても現実感に欠けてしまい、最後までどこか落ち着かない感じのままだった。

そもそも(実際にはどうだったかわからないが)この映画では、参加者のカップルたちが一攫千金を目指して参加しているように見えないのが不思議。例えば、ジェーン・フォンダが演じる主人公のグロリアも最初からやる気があるのかないのかわからないような雰囲気を漂わせている。グロリアのこの態度はストーリーそのものに関係するので当然なのだが、もう少し描写がほしいところ。もっと不思議なのは、こんなイベントで誰が儲かるのかという点。TV放送があるわけでもなく、大して多くない観客だけでやっていけるのか。ギグ・ヤングが演じる主催者で司会の男性もあおりにあおって盛り上げようとするのだが、どこか空々しい。結局、全体的に厭世観が充満している雰囲気が当時の時代感覚を表現していると頭では理解できるが、自分の内なる感情はついていけなかった。

それでも、前年公開の『バーバレラ』で披露した性的な魅力とは異なるジェーン・フォンダの色気を堪能できるのは、本作の大きなメリットだろう。当初、ジェーン・フォンダ自身は本映画への出演に乗り気ではなかったが、当時の夫のロジェ・ヴァディム監督に説得されて出演したらしい。一方、相手役のロバートを演じたマイケル・サラザンの若くして達観したような演技も印象的。精神的に不安定な女優アンナを演じたスザンナ・ヨークも良い。
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