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ライク・サムワン・イン・ラブのakrutmのレビュー・感想・評価

3.7
84歳の元大学教授の男性、デートクラブから派遣された女子大生、彼女の恋人である青年の3者の移りゆく関係を描いた、アッバス・キアロスタミ監督の遺作となるドラマ映画。

イランの巨匠アッバス・キアロスタミがちょくちょく訪れていた日本で目にした水商売の女性や電話ボックスのピンクチラシなどから発想を得て脚本を書き、すべて日本で日本語で撮影したという珍しい作品である。東京のどこかの駅前のロータリーという設定のシーンで、いきなりビルの壁面にSHIZUOKAという文字が浮かび上がるのは御愛嬌。実際に、静岡駅で撮影されている。

主人公の男性の、倫理観の強い知識人(奥野匡がそういう風にあまり見えないのがちょっと難点)という人物像と、他方でデートクラブで女を買う(身体を売っているかどうかは曖昧なまま)という非倫理的な行動のねじれがベースとなるストーリーは悪くないし、こういうラストは個人的には好きである。やっぱりキアロスタミ作品だと思わせる車内シーンや、声の主を映さずにその視点から周りを映す主観ショットも印象的。でも、日本を舞台としてこの内容を見たいかと言われれば、日本人の自分にとってはちょっと微妙かも。世界観にちょっと古くささも感じてしまう。
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