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華氏451の教授のレビュー・感想・評価

華氏451(1966年製作の映画)
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あべこべなディストピアと笑えないくらい、現代の日本と本質的には変わらないような世界。
戯画化されている、と言えるかもしれないが。
弾圧こそされてなくてもとうに、本を手放し。
テレビ以上にスマホやVR世界。
しかもさほど豊かとは言えないような映像に支配されていないか?と思う。

感情を持つことが不便で面倒くさいと感じ。
余計なことを思うくらいなら平坦な暮らしが良い。
そして、本を持つことが違法なら家族だろうが密告するような社会。

ちっとも笑えない。
現実とさほど変わらない世界。

その中で、ラストシーン。
本を手放せない人間はついに、その尊厳を守るために殺人を犯してしまう。
身を以て、本を読んでしまったが故に、危険な人間になってしまったという皮肉。

以下、ネタバレ。
そして、最後は自分自身が本になっていく世界で暮らす。
本になる、とは、つまり、言葉を物語ることで伝えていく「語り部」の文化まで遡る。
つまりは、最もプリミティブな世界から人間はやり直さないといけなくなる、というオチ。
つまりは、文明を持った時から、そのプリミティブさを軽視した結果に、退行していく人間の姿を映しているというのは些か深読みかもしれない。

心から楽しめた、というには、僕はまだ未熟なんだろうと思ったが、それでもラスト30分ぐらいには非常に心打たれた。
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