半兵衛

おかあさんの半兵衛のレビュー・感想・評価

おかあさん(1952年製作の映画)
4.0
長女・香川京子を通じて描かれる、様々なトラブルに見舞われながらも家族を養っていく母の物語。

この作品の巧妙なところはあくまで長女の視点で描いているところであり、家族の死や親族との問題など深刻になりそうなドラマパートは意図的にぼかされ結果のみしか出てこない。そのためあくまで子供から見た母親のドラマとなり、いつしか自分の母親のことを重ねて見るようになり最後には母を思い出し目頭が熱くなってくる。さりげなくもポイントを心得た演出で観客の母心をさらに煽ってくるベテラン成瀬巳喜男監督の手腕も心憎いばかり。

若者パートをになう香川京子と岡田英次は演技というものを感じさせない、初々しい役柄なのだがそれがかえって癒される。そして彼らのコミカルな言動や行動に隣人と付き合っているような感覚で笑えてくる。演技というものを感じさせないのに何故か黒澤明たち巨匠に愛された香川京子の純朴なキャラクターが存分に生かされている。こんな女優世界を見舞わしてもなかなかいないと思う。

加東大介を筆頭に三島雅夫、中北千枝子、沢村貞子、中村是好、戦前和製チャップリンとして活躍した小倉繁、永井柳太郎、三好栄子と脇を固める豪華な役者陣のサポートも見事。無論主役の「おかあさん」を演じる田中絹代の存在感も。

ラストのメッセージは少々反則だけどね。
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