常盤しのぶ

小間使の日記の常盤しのぶのレビュー・感想・評価

小間使の日記(1963年製作の映画)
3.0
一昔前の映画は当時の生き様を克明に残すという意味合いで非常に有用であると思わせてくれる作品。いや、婦人靴をアホほど集める大旦那とかその辺にいてほしくはないが……それ以外の要素、例えば、パリ住まいの高飛車女が田舎の屋敷で小間使をやるだとか、30年代フランスで左右の思想分断が激化しているだとか、そういう部分である。

例えるならば本作は日本でいうサザエさんやちびまる子ちゃんのような立ち位置で、当時の世相を反映させながらそこに登場する人物を面白おかしく描いていくスタイルである。移動手段や服装等も観ていて楽しい。本作はそういった30年代フランスに生きる人々をルイス・ブニュエル風味に楽しむ作品であり、言葉を悪くするならばそれ以上でもそれ以下でもない作品である。

それにしてもルイス・ブニュエルは本当に足フェチだなぁ……。本作に出てくる男性は全員気持ち悪いが、靴フェチの大旦那の変態ぶりが一等生々しい。

田舎訛りのおばちゃん小間使が健気でかわいい。変な人間が多い本作の中でマスコットキャラのような愛さしさを見せてくれる。

本作のなかである事件が発生し、ひと悶着あり、最終的には右派集団の靴の音を響かせながら本作は結末を迎える。ルイス・ブニュエルの政治的思想や当時の情勢を頭に入れておけば本作はより一層楽しめるかもしれない。