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懺悔のnobueのネタバレレビュー・内容・結末

懺悔(1984年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

冒頭、教会を模したケーキをなんのためらいもなくガサツに食べる無神経で頭は弱そうだがまあまあいい人そうに見える男が市長を「善人だった」と話す場面にもう全てが暗示されていたのか

「教会に通じない道が なんの役に立つのですか?」の一言で全てがまとまってしまった。それでも市長を肯定したがる人々はこの一言で全ての主張を、言い訳を封じられる。あざやか。

好きな映画は?と聞かれたらいつも忘れずにこの映画を挙げて少しでもたくさんの人に観てもらいたい

それにしても、独裁者の墓を何回でも掘り起こすという筋書き、本当に良い。何回思い出してもちょっと面白いながらも死ぬほどシリアスで、怒りの表現として強い。

追記
この監督は意図の表現の純度がとにかく高く、美しい。「彼に安らかに眠る資格はない、わたしは何度でも墓を掘り起こす」というセリフを話す女性が主人公であることで、問題は倫理であり、尊厳であり、それ以外のことではないということがこれ以上なくクリアに示されている。そしてラスト、「教会へ続いていない道になんの意味が?」という老女のセリフは、あらゆる雑音を黙らせる。長い物語を経て、観ている私たちの気持ちはスーッと一つのところに収斂していく。

なりゆきで2回目鑑賞。9月8日。連れて行った人の鑑賞後の第一声が「面白かった」だったので大満足です

この映画の女性が何度でも墓を掘り起こす筋書きがなぜこんなに好きなんだろうとずっと自問自答していたが、彼女が誰とも連帯せず、自分の記憶と倫理観だけを手に自分のできる最大限の抵抗を見せる、個人としての強さが純粋に表現されているところに憧れてしまうんだなと思った
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