ジジイ

阿賀に生きるのジジイのレビュー・感想・評価

阿賀に生きる(1992年製作の映画)
4.5
1992年公開のドキュメンタリー作品。新潟水俣病の舞台となった阿賀野川流域で暮らす人々の日常を描く。冒頭、降りしきる雨のなか川沿いの田んぼで稲を収穫する老夫婦。おばあさんの腰は深く曲がり歩くことも辛そうだ。監督ら7人のクルーは地域の民家を借りて住み、時に農作業を手伝いながら、3年に渡ってカメラを回したという。囲炉裏ばたで酒を飲みながら交わされる、ほとんど外国語のような方言の会話が楽しい。だが、川の汚染の影響からなのか舟を造らなくなった船大工のおじいさんや、手の甲がえぐいほど変形しているのに、公害認定されないおばあさんの姿を見るにつけ、確実に水俣病の深刻な影響が存在していることが分かる。水銀を垂れ流しにした企業はさぞかし憎まれているのだろうと思いきや、地元の人たちは驚くほど悪く言わない。過酷な運命にあらがうのではなく、静かに受け入れながら明るく逞しく生きていく人々の姿に深い感動を覚えた。
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