しばいぬたろう

レッド・オクトーバーを追え!のしばいぬたろうのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

『レッド・オクトーバーを追え!』('90)
The Hunt for Red October / アメリカ合衆国 / 英語

本作はハリソン・フォードではなくアレック・ボールドウィンが演じた「ジャック・ライアン」作品。
初代ジャック・ライアンはアレック・ボールドウィンなのだが、この後ハリソン・フォードが演じたジャック・ライアンが自分の中ではインパクトが強すぎて、本作が「ジャック・ライアン」シリーズであることを忘れてしまう。
ちなみに、シリーズの他の作品が未観賞でも、問題なく本作を鑑賞することができます。

冷戦時代のソ連からアメリカ合衆国への亡命を画策する潜水艦艦長と上層部たち。
本国にバレず、アメリカにバレず、乗組員にバレないようしながら計画を進めていく。
そんな中ただ一人、CIAの分析官であるジャック・ライアンは艦長の意図を読み解く。
計画を知っていることを艦長に伝え、アメリカへの亡命を手助けするのだ。

物語展開もスピーディーで面白く、俳優陣もかなりいい。
アレック・ボールドウィンはこの頃、弟のウィリアム・ボールドウィンと顔がかなり似ているから、ダラス艦長と二人で並んでいると『バックドラフト』的に趣深い構図になっている。
サム・ニールは「モンタナが~」とずっと言い続けているが、『モンタナの風に抱かれて』を考えると「安心して、行けるから!」と思ってしまう。
サム・ニールに関しては、『ジュラシック・パーク』の人という印象か、『レッドオクトーバーを追え!』の人という印象かで世代がわかれると思う。
ショーン・コネリーについては、やはり素晴らしい俳優だ。
アメリカ合衆国側に計画がばれていることを知った時の顔なんか最高。
また、『ホーム・アローン2』のホテルマンや初代『IT』のペニーワイズを演じたティム・カリーは、本作ではソ連の潜水艦乗組員の一人なのだが、とてもいい味を出していた。
スコット・グレンは味があって、好きな俳優の一人だ。

一部だけど、ロシア語喋っていたこともすごいなぁ、と思う要点の一つ。
ロシア人を演じた役者さんはゲイリー・オールドマンやケイト・ブランシェットなど、実力派俳優ばかり。
ロシア語は全くわからないため流暢にに話せているかわからないが、ハリウッド大作だから手抜きはないと思う。
すぐに英語に切り替わってしまうが、アメリカ映画なので仕方がない。
むしろ最初から英語でも良かったのではないかと思う。

小難しい亡命関係の話だけにとどまらず、艦内でのアクションもあり、見ごたえのある作品。

本作はジャック・ライアンとロシア人艦長の意思疎通の上で亡命を成し遂げる英雄ものの話として描かれている。
しかしそれはアメリカ側の目線。
ソ連側からしたら売国奴もいいところではないだろうか。
潜水艦の情報ごとアメリカに渡しちゃうのだから。
乗組員たちは艦長が亡命することを目的としていることを知らずに、「艦と共に」という信念を選んでアメリカと戦っていると信じている。
それを滑稽に描いているが、かなり気の毒だと思う。
自分はソ連は嫌いだし、本作は映画作品としては出来がいいのだが、感情論ではそう思う次第だった。

作品の作り込まれ方や映像等も含めて、かなり良作だし、アメリカらしい作品。
潜水艦の緊迫感も味わえるので、重厚な軍事サスペンスを鑑賞したい方にお勧めです。
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