風来坊

ヒートの風来坊のレビュー・感想・評価

ヒート(1995年製作の映画)
5.0
私の好きな映画の1つ。久しぶりに観ました。
20代の頃に観てマイケル・マン監督が好きになり、本作の原型でもある「メイド・イン・L.A.」など過去作を掘り漁った思い出があります。

とにかくアル・パチーノさん演じる生活感が溢れて仕事一筋のヴィンセント・ハナ警部と、ロバート・デ・ニーロさん演じる犯罪に生き自分なりの美学を持つニール・マッコーリーとの火花を散らす対決が見もの。

その他のキャスティングも当時の人気俳優のダイアン・ヴェノーラ、アシュレイ・ジャッド、ナタリー・ポートマン、トム・サイズモア、ヴァル・キルマーさんなど豪華。更に監督の好なのかジョン・ボイト、ウィリアム・フィクナー、ダニー・トレホ、ウェス・ステュデイさんなど渋い起用も光ります。

一見は本筋と関係ないように見せながら、ウェイングローやヴァン・ザントや仮出所の黒人の男などのエピソードが本筋に合流する脚本の上手さが目をみはります。
刑事の家族と犯罪者の家族や、ハナの忙しない生活とニールの孤独な生活の対比も見事だったと思います。

しかし、クリス夫妻のいざこざやウェイングローの凶行などちょっと詰め込み過ぎかなと思うところも。
ホテルの部屋に踏み込む際のシーンが明らかに吹き替えで、アル・パチーノさんに見えないのが残念。

「アンビュランス」の銀行強盗のシーンや銃撃戦は本作から影響を受けているとマイケル・ベイ監督が語っていたが、大御所監督にも影響を与えるほど市街地での銃撃戦は映画史に残ると思います。
市街地に響き渡る銃火器の乾いた轟音と、必死に逃げる者と必死に追う者の気迫が更に凄まじい迫力にしています。

コーヒーショップでのシーンなどアル・パチーノさんとロバート・デ・ニーロさんが一緒にカメラにハッキリと収まるシーンが無いため。
当時は別々に撮っていて本当は共演していないんじゃないかと噂が流れました。

実際はコーヒーショップでは向かい合っていて、相手の背中越しの方が緊張感を高めるという演出だったそう。
こんな噂が流れるほど「ゴッド・ファーザー」以来の2人の名優の共演はビッグな話でした。

刑事と犯罪者全く別の境遇に生きながらお互いに認めあい、そして火花を散らす対決へ。
Mobyの切ない曲が流れる中での男と男の熱い戦いの終焉。余韻溢れるラストカットは最高。

久しぶりの鑑賞でしたが、やっぱり最高な一作。

まとめの一言
「ヤマを踏むプロ、それを阻むプロ」
風来坊

風来坊