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イーオン・フラックスのmatchypotterのレビュー・感想・評価

イーオン・フラックス(2005年製作の映画)
3.2
独特な閉鎖的な近未来SF。
昔、観たことあったけど、この完全に突き抜けてるけどやたらと淡々とした世界観への違和感を受け入れるのはレベルが高い。

相当に色々作り上げられてる世界で緑豊か。ここ最近観たとこで言う『エリジウム』とか『サラマンダー』みたいな荒廃的な世界とも違うし、開放的な環境でもない。でも何か、人間らしい何かが欠けてる、そんな感じの世界。

それでいて、説明は為されるけど、100分もない本編なので無駄どころかあまり助走もなく、ガンガン話を進める潔さ。

故に「なに、その部屋?」とか「今、この人は何してるの?」「今のどういう意味?」とか細かいところは、あまり深く考えると道に迷い始めるのでそこは諦めてとにかくこの世界観に圧倒されながら身を預ければ良い。

何だかやたらと整然としてて、物静か。
もちろんアクションもあるけど、女性が主人公ということもあってかかなりスタイリッシュでスマート。

誰も「ワー!」とか「キャー!」とか「うぉぉぉ〜〜!」とか「クッソー!」とか「このやろうぉぉ!」とか言わない。

閉鎖的で排他的で無機質な世界を司っている血統がいて、独裁的な政治をしている。彼らを“グッドチャイルド”と呼ぶ。

彼らがこの無機質な世界を作り上げてるわけだが、そこに反政府組織がいる。彼らを“モニカン”と呼ぶ。

この“モニカン”の中でも生え抜きの工作員がイーオンフラックス、シャーリーズセロン。

彼女は反政府組織の命令に従い、そして、彼女の個人的な遺恨に付き従い、ついに“グッドチャイルド”を暗殺する任務に命じられる。
この“モニカン”の指示系統がなかなかは独特。その白い部屋、そして、フランシスマクドーマンド。

なんしか本作は単純な「憎き悪代官を打ち倒す世直し女影武者」な話ではない。

そして、任務を遂行し、核心に迫れば迫るほど、いつしかシャーリーズセロンの目的や行動が周りにとっても本人にとっても意外な展開を見せる。

世界観も見た目が淡々としてるからこそ、詳細をあえて言わず色んな“含み”を織り交ぜてる気がする。

だけど、あまりあれこれ追わなくても、後半に衝撃の事実が明かされて、すべてそこに持っていかれるので気にしなくて良い。
あの空飛んでる“あれ”も、途中でちゃんと意味を成す。

なんでこんなに無機質で淡々としているのか、有機的なものから一線置いてるような閉鎖的な世界なのか、イーオンも観てるこっちも、驚きの展開。

驚きとはいえ、わかったらわかったで「なるほどな」とは思える。問題は「じゃあそれはそうだとして、何で色々そんなことになるのか」ではあるけど。
そして、さり気なく入れてくるとんでもないラブロマンスもスゴい。

とにかく何にせよ、美しきシャーリーズセロンの体当たりの華麗なる身捌き、これに尽きる。

「生きろ、イーオン。人類のために。」


F:1765
M:7344
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