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トリコロール/青の愛のENDOのレビュー・感想・評価

トリコロール/青の愛(1993年製作の映画)
4.0
事故で著名な現代音楽家の夫と小さな娘を失った時、女はどうしたのか。ジュリエット・ビノシュの凜とした美しさ。痛々しいまでに、心にできた生傷を孤独に癒していく。できたての傷を忘れるために彼女は夫が作っていた未完成の曲を処分する。ごみ収集車に押しつぶされる楽譜を見送る視線。嫌いな鼠の声がしてを靴で踏みつぶすと、そこには鼠の胎児が数匹転がっていた。その光景にうなされ、翌日彼女は管理人の猫を借りけしかける。その残酷さ。
引っ越した先に、現れた娼婦は、彼女とは真裏の世界で生きているが、彼女を癒す。卑しいとされている者が聖なるものとなる。一夜をともにした音楽家の友人は、忘れられず彼女を追いかける。さらに未発表曲はコピーが取られており、彼が続きを制作するとテレビで知ることになる。困惑する彼女だが、実は夫には愛人がおり、遺児まで残していたのだ。苦悶の夜を繰り返した後、夫と共作といっていいほど作品に密着していた彼女は考えを改め、曲を自分名義で発表することを決意する。残された家は愛人とその子供のために譲る。
彼女は夫の友人と新たなパートナーシップを結ぶだろう。(前後の変化がない)暗転を繰り返し彼女は起き上がったのだ。

映画のエンディングのプレイスネルの音楽「欧州統合のための協奏曲」は「コリント人への聖パウロの第一の手紙」が引用される。神の愛の絶対なることと、その愛に報いることが人には必要だ、と謳われている。

『たとえ私が、人びとの言葉や御使たちの言葉を語っても、もし愛がなければ、私はやかましい鐘や騒がしいシンバルと同じである。
たとえまた、私に預言する力があり、あらゆる奥義とあらゆる知識に通じていても、また、信仰があっても、もし愛がなければ私は無に等しい。
愛は寛容であり、愛は情け深い。
全てを忍び、全てを信じ、全てを望み、全てを耐える。愛はいつまでも絶えることがない。しかし、預言はすたれ、異言はやみ、知識は廃れるであろう。いつまでも存続するものは、信仰と希望と愛と、この三つである。このうちで最も大いなるものは、愛である。』
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