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チェンジリングのTPのネタバレレビュー・内容・結末

チェンジリング(2008年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

 冒頭から、今では信じられないような腐敗した警察による市民への弾圧ぶりがスピーディに描かれる。
 9年間育てた息子を母親がわからなくなることなんかあり得ないのに、警察は被害者であった母親の言うことなんか聞きやしない。挙句には精神病院にまで押し込んで、どうなってしまうのだろうとハラハラしっぱなし。
 それが前半で、その後、事件の真相が解明されていく過程、警察の腐敗の糾明、実際のウォルター少年はどうなったのか?という複数の興味深いストーリーが並行して進んでいくので、全く息つく暇もないような緊迫感がずっと保たれる。

 その緊迫感の継続を後押しするのは、アンジーの演技。この境遇なら発狂しっぱなしでもよかったものの、目力を駆使した抑えた演技を一貫して通し、どうしようもない時だけ爆発させるというメリハリのつけ方も素晴らしく、これでアカデミー主演女優賞がノミネートで終わったのが不思議なくらい。
 また、全く気付かなかったジョン・マルコビッチを始めとした、地味だが確かな俳優陣(特にふてぶてしいジョーンズ警部役の人が秀逸)がわきを固めているのも良い。

 あまりに衝撃的な内容だったので、本件のベースであるゴードン・ノースコット事件を鑑賞後によくよく調べると、結構脚色されていること(ウォルターが偽だった元凶はなりすましたハッチンズ少年の陰謀の部分が大きい。5年後に殺人犯から逃げ出した少年が生きて見つかったという事実はない、など)がわかったが、もともと本作はドキュメントではないのだから、事実と異なること自体は評価に影響させない。
 イーストウッドも「実話」と冒頭にクレジットすることは避けたかったらしいし。

 冒頭で、クリスティンの態度があまり息子を愛しているようには見えなかった点と、なぜシングルマザーなのに不自由のない暮らしぶりなのか、というところはちょっと気になったが、その点を差し引いてもなかなかの傑作といえる作品だと思う。
TP

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