三隅炎雄

渡世人の三隅炎雄のレビュー・感想・評価

渡世人(1967年製作の映画)
4.0
柳条湖事件前後の生臭い政治的な掴みで、着流し任侠映画に梅宮辰夫の現代的な個性を上手く溶け込ませている。大陸侵略を止めようと来日した満州馬賊をテロる鶴田浩二・若山富三郎の渡世人コンビも強烈なインパクトがある。始まりほど政治的に余り深掘りされていかないのは残念だが、棚田吾郎の脚本は人物・物語共に丁寧に書き込まれているし、佐伯演出も堂々たる職人仕事で見応えがじゅうぶんだ。
メインの梅宮の妻に現実味のある地味な容貌の市川和子、田舎の侠客の家の娘にモデル然とした城野ゆきを配したキャスティングは面白いし、主題歌も兼ねる城卓矢の渡世人も生きの良い現代的な芝居で梅宮と相性が良い。金子信雄が獅子舞の獅子みたいに総金歯だったり(カネの亡者!)、殴り込みにいく梅宮を引き止めるのが女優でなく、よりによって藤山寛美だったりと、ちょっとした細部の遊びも嬉しい。
惜しいのは梅宮が殺陣が上手くないので、最後のアクションが今一ビシリと決まらないこと。
三隅炎雄

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