ニューランド

黄色いからすのニューランドのレビュー・感想・評価

黄色いからす(1957年製作の映画)
3.7
☑️『黄色いからす』及び『蛍火』▶️▶️
長谷部だけでない、戦後五所作品を確かにする、共闘名人の威力を見せつける2作。宮島に芥川。
初めて観た時はFCでやはり今回のプリント、次に名画座で観た時は殆ど色が抜けてて(FC~FAのも、ある程度抜けてるが)、いつか口直しをと思ってた。児童映画の枠に収まってる面がなくもないが、脚本⋅撮影⋅音楽の、気鋭⋅巨匠が恐ろしい位に腕を振るっている。シュールリアリストのあからさまは、シーンが替わる所の黄色い液一面ダレ⋅飛んでくカラスの影の羽ばたきDIS重ねアニメ的、子供の写生画のネガ的色彩使いに見られるくらいで、「会社でバカにされ、子供に甘く見られ」る8年抑留復員の夫はポイントポイントで描かれ、隣の孤児の養女引き取り⋅職人を使ってる初老の女の全体へ及ぼす力が大き過ぎる、とはいえ偶然の不遇⋅誤解の押し流す力あっても、矛盾と「素直」を揺れ動き、小動物への愛着と大人の反応に過敏すぎる、(いつしか皆の本意でない所で「弾き出された」)少年の心の荒びと無垢にしっかり寄り添い続けてる(母は見透し窺えても家庭に於ける引っ張る力は持てぬに甘んじざるを得ない姿勢)、本は力はある。
巨匠撮影監督は、俯瞰めや窓越しの図多用(時に仰角⋅ローも)、背景ミニチュア等認めない完全世界、アップも硬く緩さ無し、90°他位置と角度変えと寄る他の鋭く確かな移動をといつもの特性を踏んで、カット対応力も湿りや熱しがなく⋅温度と距離が最適で、それが内に進むグレーやブラウンに沈み⋅鈍い赤や緑めの艶やかさが限定して浮き上がる、生気を抑制したトーンで半ば以上を貫いてく。やがて夕光が室内へ⋅朝光がついで⋅夕焼け光が浜辺へ、というように陽光が人⋅その肌を蘇らしてきて、落ちる銀杏群⋅風雨の粒も、色や力を持って加算されてくる。結果、恐ろしく精美なものが見えてくる。音楽⋅音響もそうだ、弦や太鼓や邦洋際立つ効果音楽、機器からの場面内音楽、虫や風雨⋅汽笛や時計の自然や環境音、らがそれぞれ単体で中心を入れ替わり占めてたのが、同時一体混在化か、単体でもウエイトを異様に強めくる。
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『蛍火』を観るのはまだ2回目でしかも30年位は間が空いてるので、アレッと勘違いしてたのは、1958年作という事で殆どの商業映画が移行してるスコープ作品と思ってたことだ。天皇宮島は、スタンダード 画面で、美術⋅光線⋅時制⋅時代⋅立体を完全コントロールし、幕末の要請する時代の変わり目⋅緊迫感を無化するような、貧しい出自から思い上がり露ないというか⋅自己を出発点に戻し自己の足場⋅観点を見失う事のない、真に世界への見聞広め⋅方向定めを怠らず、それを足元を見て固める生き方を確かにしてゆくだけ(我を失った夢も実体として持ちかけもするが)のヒロインにフィットして、(観念的)中心のない万華鏡の、完全映画世界を構築してる。心理も、伝えやリアクションの動き⋅歩進めも、縦横空間張り合わせ多彩堅固止めどない現れを更に拡げ、順列でない未来や世界に届かんとしている。柔らかいトーンで、薄暗め⋅的確なだけのカット置き⋅美術壮健の、インパクト今いち、しかし、何か心地いい作。玄関⋅土間⋅部屋⋅廊下⋅階段⋅屋根が実体を超えて動きと意識を追う、確かめ受け止めの90°変主体⋅制限無しの確かさと拡大。やはり、俯瞰め多く、前後移動時折確かに⋅横へも、様々な傾斜や隣接の角度力、(芥川の)現実性上回る自在音楽や1区画音響の一気抽象中心化、緩急短いカットの自発リズム内在、屋内から屋根並びと竹林⋅大木置場⋅船着場へ普通に繋がり、そのカット繋ぎもカメラ移動も構図やその長さ溜めも、威容を示す事は一切なく、余計に内実が染み込む。しかし、それは世界への観念やキャラらの生き方にも及び、押し付けがましい感動⋅納得とは一切無縁。「貧しい人を無くす。封建制を倒す。しかし、1人だけ進み⋅皆とはぐれ孤立化も」という龍馬も、水呑百姓から寺田屋の女将のルートへみそめられ、其れまでの語られぬ悲惨から⋅夫以外の新家族から蔑視迫害も世界へ係われる「幸せ」と店の為にどこまでも労を厭わず、家族⋅使用人⋅客の全てに無心に頼れるの拠り所とされ、新事態にも、欲得ない立ち位置の低さと常に学ぶ姿勢から判断が未来を作るヒロインの、「傍にいてくれる人からの安心」無意識求めも、差異はなく、観る者は高揚とは別に、不可視の未来と中心を得られる、そんな万華鏡だ。娘の血縁も義理も、大義も使命感も、脆弱⋅危険も安泰地位譲りも、判断なくカードとしてはあるも、自体の価値⋅重みはないのだ。そんな完全時代劇(言葉使いの不適切指摘も無意味)⋅完全(どこへも⋅どこまでも確かな)万華鏡なのだ。
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