RyoIkeda

ペイルライダーのRyoIkedaのレビュー・感想・評価

ペイルライダー(1985年製作の映画)
4.2

『荒野のストレンジャー』『アウトロー』に引き続く、イーストウッド監督・主演の西部劇3作目。

カリフォルニア州カーボン峡谷。周囲の峡谷が鉱山採掘会社の手中に落ちていくなかで、ここカーボン峡谷だけは鉱山経営者ラフッド(リチャード・ダイサート)の手から逃れていた。
しかし、その陥落も時間の問題。
ラフッド社の嫌がらせにより、集落が襲われる場面から物語は始まる。
この不条理な悲劇から始まる物語の展開は、『アウトロー』に通じるものがあるが、本作ではさらにストーリー的な意義が内包されているように感じる。
そして不条理な惨劇に、村の娘メガン(シドニー・ペニー)は生活の拠り所であった「神への信仰心」を疑わずにはいられない。
『ダーティハリー』で、「JESUS SAVES(神が助けてくれる)」と記されたネオンの下で凶弾に襲われるハリーや『トゥルー・クライム』で信仰を一切否定し、自らのカンのみを頼りにするエベレットのように、本作でも「信仰」の無力さが突きつけられる。

巨大企業の手が伸びるなか、蒼白の馬に跨ってカーボン峡谷にやってくる1人の牧師(クリント・イーストウッド)。
牧師であるのに、圧倒的な力でフラッド社の取り巻きを退けていく。
彼の登場により、いよいよ村はフラッド社との抗争に踏み切る。

この頃から西部劇は、アメリカン・ドリームの追求から外れていくのだろうか。
開拓者の栄華は終わり、今度は開拓者への訴求が始まる。
まさに本作はそのような西部劇の転換の最中にあり、最後の西部劇である『許されざる者』へと繋がっていく布石なのだろう。
RyoIkeda

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