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ドラえもん のび太と翼の勇者たちの都部のレビュー・感想・評価

2.3
作品内で扱われるイベントの多さが足を引っ張っている印象を受ける本作は、人間と鳥類の共生関係の示唆やPTSDにより飛べなくなったグースケの心理的成長やバートピアの伝説の正体とあちこちに縦軸を伸ばしているが、そのどれもが生半可な結実しか得られずに結果として作品の出来はそれ相応のものとなっている。

まずお馴染みの人間の環境破壊による鳥類の迫害/絶滅に対する働き掛けの環境問題要素は早々に切り捨てられて、現代と人類から離れたバートピアの物語が始まるから問題の本質からは離れたきらいがあって、巡り巡って最後には共生関係の重要性に帰結するもののその説得力は薄い。

今回の一件の解決に尽力したドラえもんたちに対して、"そういう人間もいるから信じよう"という理由は本来であればその程度の帰結で納得にたる話なのだが、明確な被害者──それは今回の敵役の人間への正当な恨み辛みを無視した結論であるし、共生関係と言うには被害者の泣き寝入りのようですらある。人間への怒りが封殺される形で幕を閉じるわけで、それを綺麗に見せてはいるが、しかしそんなのってあんまりだろう。

また本作の主人公とも言えるグースケのドラマも微妙なものだ。

幼い頃の体験に基づくPTSDにより飛べない彼が人力飛行機でレースを完走するというのはドラマチックであり、そのドラマは今の当人の肯定にも繋がるように思うのだが、中盤 完走した上でその成果が否定されるのは座りが悪いにもほどがある。胸糞に感じるから悪いという話でもなく、結局のところ自らの力で飛ぶことで全てが解決する流れが、それまでの彼の努力や在り方を画一的な方の肯定で否定しているのは駄目だろう。加えてグースケを取り巻く人間関係の描写も杜撰で、明らかに他の鳥類と異なるイカロスとのドラマは回想による事実の示唆に終わり、そこに新たに生じるドラマはさほど存在しない。

グースケの成長のドラマとして物語が一貫していれば物語としては綺麗だったと思うが、そこに関与する全体/敵役個人のドラマが介入することで雑味が増えており、要素をひたすら足すことで映画尺に伸ばす為の脚本の組み方がとにかく気に食わなかった。ただレースシーンのスピード感を感じさせるシーンの数々は、本作の数少ない良い点である。
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