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櫻の園のくりふのレビュー・感想・評価

櫻の園(1990年製作の映画)
4.0
【舞台裏が、表舞台】

先日『海街diary』をみて、同じく吉田秋生原作で女子ーズ時間を描く本作を思い出し、改めてみ直しました。

これは、残る作品ですね!少女たちの、痛みを伴うふわり感。映画的に、感情のピークを浮遊させて一瞬、留めるところが見事だと思う。

原作で印象的だった一点が、A子がB子を好きになる理由に「女の生臭さがない」と語られること。男の私には、吉田作品で時に迸るこの生臭さが魅力で、やはり作者も自覚していたのか、と打たれましたね。

しかし映画には、「女の生臭さ」が出て来ない。台詞にもない。映画は脚本・監督とも、男の視線で美し寄りに濾過されていますね。が、それでつまらないかと言えば逆。

このアレンジにはきちんと、映画として組み立て直す戦略がある。原作より直截に酔わせるジャンプ力がある。最近、私はこういう事例に出会えておらず、改めて新鮮でした。

しかし1990年制作って、こんなに古いんですね…。始め、芋ねーちゃん(死語)ばかり出て来てどうなるかと思ったのですが、主要キャストがぽつ、ぽつと加わってきて俄然面白くなります。

ほぼ昭和顔が続く中、つみきみほが登場すると画面が一段、シェイプされる(笑)。タバコ絡みでトラブる役、初台詞が「すいません」ってこれ狙ってんのかと爆笑しちゃったけど。

戦略がきちんとしているせいか、今みると技巧で空回りしている部分はあるし(最後のドリーズームなんてガタガタ)、要となる女子三角関係は、第三者の描き方がちょっと唐突。

あと「太田胃散のテーマ」が鳴り過ぎだなあとか。

他、弱点はいくつか感じるものの、これだけ、女子力を妄想に墜ちず、清涼につかまえた映画って、ちょっとないと思う。やっぱり、残る映画でしょう。

ネットで見つけた予告編動画。本編に使われていないフッテージを巧く使い、こちらも感心しました。ちょっとした短編映画のようです。

https://youtu.be/yyjnadKkCoY

<2015.7.2記>
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