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ペレの遊のレビュー・感想・評価

ペレ(1987年製作の映画)
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デンマークに渡る船の上での父子のやり取りと表情、開始2分で泣かせる手筈を完璧に整えてくる
拾われて雇われてからはペレだけでなく農園で働く人々の群像劇になる、
教科書で言葉としてだけ読む「地主と小作人の対立」「不満の爆発」がそのまま描かれていた

子供に見せちゃいけないものは、エロより暴力より「親が権力に屈する姿」だな

移民を理由にいじめられ続けるペレが、まるで性欲を満たすみたいに同級生にお金を払って暴力を振るうシーンがいちばん見ていてつらかった

マックス・フォン・シドーの表情、「息子への愛は深いのに、力がなくて支えてやれない」ことのやるせなさ、持たざる者としてここまで人生を送ってしまったゆえに息子の人生をも暗いものにしてしまいそうなことへの引き裂かれるような痛み、かといってこうすれば良かったと思える分岐が今までにあったわけじゃないという諦め はかりきれない大きさの機微が伝わってくる表情

あまりにもかなしさが詰まった映画すぎて、こういう映画がパルムドールもアカデミー賞も獲るような世界はどういうフェイズなんだと思ってしまった
この世界のどこかにあるかなしみを高い解像度で描き出した作品が高く評価される、ということにどんな意味があるのか?もしも仮に世界平和が達成されたとき、こういう作品はつくられなくなり、それが芸術の世界でも理想状態と定義されるのか、そもそも平和な世界に芸術は存在しなくなっていくのか?
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