SANKOU

フォレスト・ガンプ/一期一会のSANKOUのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

冒頭、快晴の空を舞う一枚の白い羽が、汚れたスニーカーを履いた一人の青年の足下に落ちる。普通なら見向きもされないこの羽を、青年は丁寧に鞄から出した絵本の間に挟む。
この作品の主人公フォレスト・ガンプに興味を抱かせるとても印象的な始まりだ。
彼はIQは75しかないが、無垢な心を持った優しい青年だ。
彼がバス停で隣に座った看護師風の女性に、彼の生い立ちを話し始める形で物語は進行していくのだが、一人称で語られる彼のエピソードはとてもユニークで興味深い。
知能指数が高くなくても、背骨が真っ直ぐでなくても、人並みの教育を受けさせようとした母親の意志の強さ。
「人生はチョコレートの箱のよう。食べるまで中身は分からない」という台詞はあまりにも有名だ。
人と違うことからいじめられたり、蔑まれたりと決して順風満帆ではない彼の人生だが、母親譲りの心の強さと、人を想う優しい心が彼を常に正しい方向へと導いていく。
ケネディやニクソンといった歴代の大統領、またエルヴィス・プレスリーやジョン・レノンといった著名人に彼が出会い、彼らに影響を与えていくフィクションはとても面白く、また彼がバス停で語るエピソードを聞いている人物が次々に入れ替わっていくのもおかしかった。
とにかくフォレストという純真無垢な存在に心引かれてしまう作品で、心温まる内容なのだが、一方でとても際どい作品であるとも感じた。
彼は自分の思った方向に向かって生きているだけなのだが、物事の裏側を考えたり、疑うことを知らないフォレストは常に何かに都合よく利用されているようにも見える。
それは大学のフットボールのコーチの「頭はトロイが、足は本当に速い」という言葉にも見られるし、彼が軍隊に入隊した時の台詞「軍隊は自分にはとても合っていた。何故なら上官の命令に従えばよいのだから」にも感じられた。
気がつけば軍に従順に生きてきた彼は栄誉勲章を授与されている。
反対に都合の悪い人物として描かれているのが、フォレストを幼い時から助けてくれたジェニーだ。
初めて会った時の印象が天使のようだったジェニーは、徐々にセックスとドラッグに溺れる堕落した存在として描かれていく。
ベトナム戦争で国のために戦った人達に反して、ジェニーを含む国内で反戦活動をしていた人達は怠惰で粗野で自分勝手な存在として悪のように描かれている。
実際には口だけで具体的な行動を起こさず、快楽にふけっていたヒッピーもいたのかもしれないが。
利用されているように見えたフォレストも、ベトナムで出会ったベンジャミンという人物と交わした約束を実行するためにエビ漁船を始めるところから、次第に人に影響を与える人物になっていく。
ベトナムでの上官ダン中尉との交流はとても印象的で、彼と一緒にエビ漁に出るシーンは心に残った。
そして、ジェニーに振り回されながらも彼女を献身的に愛するフォレスト。
彼女が去った後に理由もなく走り始め、大陸を何往復もしてる内に、後ろに彼の信者らしき人達がびっしり着いてくるシーンは爽快だった。
ラストは悲しいけれども感動的で、副題に付いている一期一会はとてもこの映画を上手く表しているなと思った。
誰もがフォレストのように無垢ではいられないけれど、彼のように強い信念を持って真っ直ぐ生きようとする姿勢はとても大切だと思った。
SANKOU

SANKOU