むさじー

リラの門のむさじーのレビュー・感想・評価

リラの門(1957年製作の映画)
4.0
<悪人を巡る恋と人情は切なく>

怠け者だが善良で優しい男が、逃亡中の強盗を匿う羽目になり、面倒をみるうち友情が芽生えるが、男が想いを寄せる娘がその秘密を知り、出会った娘と強盗は恋に落ちる。
しかし高飛びしようとする強盗の真の狙いは金で、そのことを娘が知った時の失望を思い男は強盗に懇願するが……という展開。
ラストシーンは事細かに描かない急激な展開で「その後は不明。想像に任せる」かのように切ない余韻を残して締められる。
人情話+ラブロマンス+コメディをブレンドした古き良き時代の名作だが、いま観ても、権力を嫌う下町気質とか、“いい人”の描き方とか、善人と悪人の奇妙な友情とか、大仰ではあるがレトロな魅力に溢れている。
近年、『巴里祭』(1933年)と一緒に4Kデジタル・リマスター化され、上映される機会が増えたが、共にパリの下町の暮らしが生き生きと描かれ、音楽も素晴らしい作品である。
初期の代表作『巴里祭』はほのぼのとした恋愛映画の秀作だが、本作と比べてしまうと深みに欠け、人物キャラの造形、その絡ませ方、描く世界観の広さ、いずれをとっても24年を経た本作の重みが実感できるかと思う。
芸術家を演じるジョルジュ・ブラッサンスが弾き語りで歌うシャンソンが、しみじみと人生の機微を語りかけてくる。
むさじー

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