かめの

リラの門のかめののレビュー・感想・評価

リラの門(1957年製作の映画)
3.8

主人公の哀切はもちろん分かるんだけど、主人公以上に芸術家へ感情移入してしまって、心が痛かった。

ジュジュはのんだくれだが、周囲に愛され、特に芸術家とは気が合う友人であった。ところが、銃を持った殺人犯が芸術家の家に押し入ってきて以来、全てが変わってしまう。ジュジュは不思議なことに傲慢な殺人犯を甲斐甲斐しく世話し、芸術家曰く「尊敬」までしている。

殺人犯のピエロが現れてからというもの、ジュジュには彼しか見えていない。どれだけ冷たくされようと、好きな娘を取られようとピエロを庇い、出て行った時には寂しそうに打ちひしがれる。

一方、芸術家にとっては殺人犯などどうでも良いが、ジュジュの気持ちを慮り、ピエロの手助けに力を貸す。

どうしてジュジュは本当の友である芸術家のことを思い出してくれないのだろう?全てがピエロだ。芸術家が食べたがったフォアグラを沢山買ってやると言い、意気揚々と盗み出してきた日を忘れてしまったのだろうか?

生き方としての一人一人の性格がしっかりと作り込まれていて素晴らしく、画的にも気の利いた見せ方、構図で撮られていて興味深かった。
かめの

かめの