広島カップ

ゴジラの広島カップのレビュー・感想・評価

ゴジラ(1954年製作の映画)
5.0
今から71年前の1954年(昭和29)という年は4月26日に『七人の侍』が公開され、本作が11月3日に封切られるという日本映画界には世界にパンチを与える作品が同時に生まれたエポックメイキングな年でした。
ちなみに同年のキネマ旬報の邦画作品部門では七人...は3位、本作はベスト30にも入っておりません。

本作の主人公山根博士を演った志村喬は両作品の主役を張っていて大忙しの年だったと思います。武士役と昭和の動物学者役を見事に演じ分けていました。そして両作に出演したもう一人の役者が高堂国典。彼は共に村長(むらおさ)という役柄でセリフの調子が全く同じというあたりが可笑しかった。
大戸島に伝説上の動物と言われるゴジラが現れた時に「やっぱりゴジラかもしんねえ」「昔からの言い伝えバカにスンと、いまにオメェ達尼っ子をゴジラの餌食にしなきゃなんねえゾ」と、七人...の時の「さむれェ雇うだ」「首取られってトキに髭の心配してどうすル」と、まるきり同じ口調なのが笑えます。

やはりどうしても直近の−1.0と比較したくなってしまいますが、なぁんだ初回ゴジラだって戦後まもない東京にやって来て日本をマイナスにしてたんじゃないかというのが改めてのまず第一の感想ですが、その他にも本作と同様のポイントにいくつも気がついてしまいます。
周辺各国が調査団を派遣して来たけれど結局静観していて何もしないのも−1.0で各国共に静観していた辺りは一緒。
次々と壊される東京の街も銀座、有楽町、日比谷と直進して来て皇居が無事なのも一緒。本作では戦車や自衛隊の航空機が攻撃をしますが、なんと航空機の至近距離から発せられるミサイルが一発もゴジラに命中しなくて、見ている人々が「チキショウチキショウ」と悔しがっている。これもやはり国への頼りなさを表現していてこれも−1.0と同様ですし結局は民間の力を借りて倒す所も一緒。
−1.0は色々な所で一作目を大分踏襲しているのが改めて判りましたが、これに伊福部昭の例のスコアを採用してしまうと両作は殆ど同じに見えてしまいます。
日本のゴジラシリーズ、ハリウッドのゴジラシリーズと乱造?されている感じもするゴジ乱ですけど、一周まわって元に戻って来たのかとも感じますが決定的に違うのが原子爆弾に関する感覚の相違。
本作が示した原爆が日本人に刻んだ心の傷という感覚が−1.0では大分薄いと感じます。
本作の方がその点は濃くてメインテーマだったなぁと、−1.0を観た後に本作を改めて観てみると強く思います。
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