ボブおじさん

ゴジラのボブおじさんのレビュー・感想・評価

ゴジラ(1954年製作の映画)
4.2
山崎貴監督の最新作「ゴジラ-1.0」を観て感じた、〝初代ゴジラへのリスペクト〟を確認する為、再視聴。改めて山崎監督が目指したのはこの〝ゴジラの恐ろしさ〟だったのだと確信した。

初代ゴジラからゴジラ映画は、常に〝今〟を描いて来た。最新作では、初めて過去、しかもこのオリジナルよりも更に遡った時代を描くという挑戦をしているが、そこにはゴジラを〝抗いがたい存在〟とする為の合理的な理由があり、しかも描かれているテーマは、現在の世界に対する強烈なアンチテーゼとなっている。

1954年にアメリカが南太平洋で行った水素爆弾の実験に、日本の映画人はすぐさま反応した。新藤兼人はこの実験による被害を「第五福竜丸」として映画化し、黒澤明は「生きものの記録」を撮った。

そしてもうひとつ、この水爆実験の衝撃によって生み出された映画があった。言うまでもなくこの「ゴジラ」である。

南太平洋で行なわれた核実験によって、海底に眠っていたジュラ紀の肉食恐竜が甦った。〝ゴジラ〟と名付けられたその怪物は、大戸島を襲った後、東京へと歩を進めていく。放射能をまき散らすゴジラの前に、帝都東京は為す術もなく蹂躙されるかのように思われたが……。

この映画によって日本の特撮映画は始まったと言ってもいいだろう。最大の見せ場はゴジラが、その一挙手一投足で東京の街を無慈悲に破壊していくシーンだ。

CGもVFXもない時代、特殊撮影を任された円谷英二は、手の込んだ精巧な職人技で東京の街を再現した。このミニチュア模型の再現度の高さが、映画の成功へと繋がった。当時のスタッフ及びキャストの尽力の賜物であろう。

1954年の公開当時に、伊福部昭の重厚な音楽と共にスクリーンに映し出される、この〝絶対的な存在〟を観た観客の恐怖は如何程だっただろうか?

もちろん最新作のVFXを駆使した映像と最新の音響効果とは比べるべくもないが、当時の比較対象はエンパイア・ステート・ビルによじ登るコマ送りの〝キング・コング〟だったのだ。

この映画は、海外で最も稼いだ映画の1つであるだけでなく、世界の映画人にも大きな影響を与える。スピルバーグ、デル・トロ、ティム・バートン、マイケル・ドハティ、アレックス・デ・ラ・イグレシアなどは、ゴジラから受けた多大なインパクトを公言している。当時の特撮技術は、日本だけでなく世界中の映画ファンを唸らせたのだ。

ヒッチコックは「裏窓」、エリア・カザンは「エデンの東」、フェデリコ・フェリーニは「道」、そして黒澤明は「七人の侍」を撮った1954年に、本多猪四郎は「ゴジラ」で世界を驚愕させた!



〈余談ですが〉
「ゴジラ-1.0」を見る予定で、この映画をまた見たことがない人は、視聴する環境と時間的余裕があれば、是非見ることをおすすめします😊

最新作は、この映画に対するオマージュに溢れており、あのシーンは、オリジナルのここを再現したとか、ここを意識したと見れば直ぐにわかる様な描写がたくさん出てきます。一見不自然に見える映像もオリジナルを知っていると腑に落ちるのです。

海外の映画を観ると過去の名作へのオマージュを感じることが多いですが、日本映画では、それを感じることが少なく。欧米との映画リテラシーの差を感じてしまいます😢

「ゴジラ-1.0」は、この初代「ゴジラ」へのリスペクトとそれを超えていこうとする監督の意気込みを感じます。見る側も初代ゴジラの基礎知識を頭に入れておいた方が、映画をより楽しむことができると思います😊

最新作は、ゴジラ映画の〝捲土重来〟そしてこの映画は、まさにゴジラ映画への〝温故知新〟です。