KingKazukiManji

ゴジラのKingKazukiManjiのレビュー・感想・評価

ゴジラ(1954年製作の映画)
5.0
エンタメとして観客の度肝を抜かせながらも、それを納得させるだけの物語練度と特撮映像技術のクオリティの高さは圧巻であり、改めて劇場で鑑賞して、とても70年前の作品とは思えない驚きがあった。本作は戦争に対する批判というよりは、終戦が迎えたのにも関わらず、水爆実験を続けている人間の愚かさを批判しているのだろう。またゴジラを被害者と捉えている博士が興味深かった。だからこそ可視化した水爆は再び戦争を繰り返すし、東京は再び為す術なく焼け野原にする描写を映してているのだろう。 当時の戦後復興間もない日本が抱えていた不安や敗戦国という不安定な立ち位置の恐怖を怪獣として具現化して、あたかもエンタメ映画として描いていたのは、制作陣の視点の鋭さが素晴らしかったと言わざるを得ない。さらにはオッペンハイマーと重ねて見れるような科学者の苦悩を描いていたのも素晴らしく、胸にしこりを残すような終わり方が美しくもあり、リアリティがあった。誰もが死ぬことを良しとしないように、芹沢博士の苦悩は現代人にはわかり難いが、無責任などではなく、責任があるからこそ死を選んだのだろうと思った。死を選ばざるを得ないというのが当時の緊迫した情勢だったのだなぁと感じた。戦後の傷跡が日常に入り込んでいるのが観ていて悲しくなった。初代ゴジラを改めて観てみると、新作の物語性の練度の低さというか、ゴジラの捉え方の違いが見えてきて面白かった。
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