金春ハリネズミ

それからの金春ハリネズミのレビュー・感想・評価

それから(1985年製作の映画)
4.0
長編映画では、筒井ともみさんと初タッグなんですかね??

お互いの良い部分が相乗効果をもたらしていて見事かなぁと。

2時間と少しの尺ですが、本当に一編の小説を読み終わった様な読後感が後味よく、意外にもすっきりした気持ち。

言うなれば「詩的映像」の連続で、台詞や登場人物の描写でさえも、主眼とされてないきらいがあります。
全体の持つ深い空気感で、主人公長井の心境を綴っています。
「大分麦焼酎二階堂」のCMがあわや流れそうな画面構成にうっとりせずにはいられません。
王家衛のそれとは少し違った湿り気と、納涼たる夏の風。
憂いの侘しさをさえ感じる明治の景色が、こう、エッチすぎるわけです。
日本特有のアジア感がこれでもかといった具合に炸裂してますよね。
百合やタバコなんかもそうなんですが、個人的には「紫・赤・青」といった、ビビット味の効いた色演出が本作の決め手かと。

まぁもう、映像が良すぎて鼻から血が出ます。(別に出ません。)
そこに、細やかな台詞や音楽なんかが入るから、ああ、これはもう。
見てよかったな。ってやつです。

作品全体の印象としては地味と言われてもなんの言い逃れもできない代物ですが、原作が純文学と考えると自ずとこういう仕上がりになるのは必至で。
派手さはない分、ズッポリ肩まで浸かれるくらいの奥ゆきは十分ありますから、ええ。