・ジャンル
スラッシャー/ホラー/青春/ドラマ
・あらすじ
高校生のジェシーはエルム街に越して来てからというものの毎晩悪夢に悩まされていた
そしてある時、夢の中で不気味な容貌をした男にこう語りかけられる
「俺とお前は1つになる」と…
以降、彼の夢は現実と奇妙な形で交錯していき心を蝕んでいく
自身を乗っ取り男が犯した殺人は現実の物となり夢遊病の様に支配されていく体…
それら全ては5年前、今の彼が暮らす家に住んでいたナンシーという少女が経験した出来事に起因していた
独り夢を介して己に巣食う殺人鬼“フレディ”の存在に思い悩む中、親友のリサは彼を助けるべくナンシーの残した日記を手掛かりに必死でジェシーと向き合うがとうとう決定的な惨劇が現実の物となり…
・感想
ウェス・クレイヴンの手掛けた名作スラッシャー「エルム街の悪夢」シリーズ2作目
今作では1作目の主人公ナンシーが暮らしていた家に越してきた少年ジェシーがフレディに呑み込まれていく様が描かれている
悪夢の殺人鬼というフレディの特性を活かした体の侵食を軸としたストーリー
親友以上恋人未満のリサとの関係
悪友ロンとの不器用な友情
両親や学校のコーチら大人達との歪な関係
これらの要素と共に端々に散りばめられた性的なメタファーが絡む事で思春期特有の不安定さを表現した世界観は1作目と地続き
それでいてバイセクシュアルを匂わせる表現が加わる事でより濃密に若さ故の葛藤を押し出した世界観は素晴らしかった
フレディは言わば性欲のシンボルであり異性愛と同性愛の間での揺らぎや青年になりかけている時期ならではの男性的加害性への戸惑いなどを象徴しているんだろう
加えて1作目と同様に頭の固い父親の支配下にあるからこそ芽生える歪んだ父性への渇望の様にも思える
そして性と切り離して捉えても正気と狂気の狭間にある苦しみが上手く表現されていた
こうした比喩の面では前作よりも優れていたと個人的には感じる
一方で悪夢に巣食う怪物となる前のフレディについて新たな情報が加わる事で比喩が生み出す寓話性が若干邪魔されている印象も受けた
彼の持つ力のルーツを明かす事で現実離れした現象に背景を与え強固な物にしようと思っての事だろうとは分かる
しかしそれなら変に普遍的な思春期や性という概念と結び付けず怪物を描く事に徹した方が良かった気がする
ただそれはまだ些細な惜しいポイントで何より見づらく感じさせたのが進行の遅さ
焦らす事自体はホラーの手法として正しいはずなんだけどそれが恐怖を増幅させる演出として上手く機能していないせいで冗長に感じてしまった
尺は決して長くないし描写の大半にも意義がある
にも関わらずそう感じてしまうのは同時に無駄な場面も少なくないせいかなぁ…
学校のコーチ、シュナイダーに関わる部分をもう少し散りばめる形にして代わりに心理や苦しみを見せる事に時間を割いていたら幾分かマシだったかも?
あとはキーパーソンであるリサのキャラが薄く上手く活用出来ていないせいもあるかな…
やっている事自体は面白いだけにそういう悪い意味で焦ったさを感じさせる部分が惜しいというのが総合的な感想
それとゴア描写はもっと詰め込んで欲しかった
あくまでポップコーンムービーと言われてしまえばそれまでなんだけど…