Omizu

メフィストのOmizuのレビュー・感想・評価

メフィスト(1981年製作の映画)
3.5
【第54回アカデミー賞 外国語映画賞受賞】
『太陽の雫』『華麗なる恋の舞台で』などのサボー・イシュトヴァーン監督作品。カンヌ映画祭で脚本賞を受賞、アカデミー賞では前年の『コンフィデンス/信頼』に続き二年連続で外国語映画賞にノミネートされ受賞を果たした。

メフィストを当たり役とした役者ヘンドリック・ヘーフゲンが、当時台頭してきたナチスに巻き込まれていく様を描いている。

ヘンドリックのモデルはグスタフ・グリュンドゲンスという実在の役者で、映画と同じくメフィストを得意とした。しかしナチスの高官ゲーリングがパトロンとなっていたことで汚名を残している。

イシュトヴァーンの美学溢れる壮麗な世界観、そしてナチスが台頭してくる不穏なドイツ国内をダークに描いている。

ナチスに迎合して地位を保つか、自由のために亡命するか。いくらでも逃げるチャンスはあったのに、あまりに自己顕示欲が強すぎるが故に迎合していってしまう。

ヘンドリックはゲーリングに幾度も「メフィスト」と呼ばれる。出世欲の固まりであるヘンドリックもメフィストだが、彼を好き勝手に扱うナチスのナンバー2ゲーリングもメフィストである。

ヘンドリックは最後に「彼らは何を求めている?俺はただの役者なのに」と言う。彼自身悪魔のように振る舞っていたが、結局はただの操り人形であることに気付いてしまう。

メフィストという古典を取り込みつつ、一人の役者がズブズブとナチスの沼にはまり込んでいく様子をじっくりと描いた真面目な作品。
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