溝口健二監督作品初鑑賞です。こちらも松田春翠さんによる活弁入りを鑑賞しました。
一緒に過ごした時間はあまりにも短いのに、一緒に過ごした時間よりも離れていた時間のほうが長いのに、あんなにも強い愛が離れて過ごすふたりを繋いでいたとは。なんともその時代の文学らしい終わり方だったけど、原作未読なのでどれほど原作に忠実なのかは分かりません。
彼女の優しさや情の厚さが招いてしまった悲劇とも取れるけれど、同時にそれらが招いた出会いである。美しく着飾っている彼女もこけた頬を涙で濡らす彼女も私には輝いて見えた。守りたい者があり、愛している者があり、誰にも負けないほどの優しさを持っている彼女はいつだって強く美しい。
妹弟分である2人を手漕き船に乗せて、言葉にしきれない感謝の意を述べながらも申し訳なさそうに顔を伏せる2人を見て、優しく微笑む彼女の優しさったらもう。
憂いを持ちながらも覚悟を決めたような彼の熱い視線、それに答える彼女の目にもまた強い覚悟と熱い愛が見えた。
彼女の水藝もとても綺麗で、見所です。
泉鏡花の書籍は「高野聖」だけ購入済みなんですが、未読なのでちゃんと読まないと。
(メモ↓)
ああ、その思い出の春の月は霊峰白山の雪を照らす
宇田津鏡花の溶けて流れて紅の涙となりて散りて終わり
鐘のふく雪ぞふるよの北陸に今なお残る語り草