マピンターズボーン

ぐるりのこと。のマピンターズボーンのレビュー・感想・評価

ぐるりのこと。(2008年製作の映画)
3.6
【めんどうくさいけど、いとおしい。
いろいろあるけど、一緒にいたい。】

橋口監督の「恋人たち」の評判がかなり良いので同監督の長編前作を視聴。

皆さんは伊藤若冲という画家をご存知だろうか?

つい最近も生誕300年祭ということで展示会があったので僕は足を運んだばかりだ。

彼の見る「世界」には「神気」というものが潜んでいてそれは生物にかぎらず草、木、石と万物のモノに存在し若冲はそれを捉え対象物の真の姿を表現しようとした。

模写するだけであればそれは比較的難しいものではない。
しかしそのモノの生命の源ともいえる呼吸を感じ取るにはつぶさな観察眼が必要となる。事実、彼は数十羽の鶏を庭に飼いすぐに写生をせずに鶏の生態をひたすら観察した。
1年が経ち「神気」を捉えたと感じた若冲は絵筆を動かし紙の上に鶏の生命を宿すことになる。


さてこの物語の舞台となる1990年代は日本の社会の闇を照らす10年間となった。
地下鉄サリン事件、池田小学校児童殺傷事件、阪神淡路大震災、新潟少女監禁事件。

テーマは「他者への想像力」

この世には沢山の人が存在している。
今日も街には人が溢れかえり無感情に交差していく。

でもそんな一人ひとりが悩みや苦しみを抱えて生きている。
どれだけ頑張ってもその苦しみから逃れることが出来なくてそれでも必死でもがいている。

何も特別なことなんかじゃない。
普通にありえること。

ふと急に寂しくなって全てを投げて逃げ出したくなる。



「平気平気。無理しなくていいんだよ」



そんな時に側にいてくれるのが夫婦だったり家族だったりする。

夫婦になるって多分
夫が妻に。妻が夫に。
それぞれ思いやりを持つことだ。
結婚したから夫婦になれるわけではない。
お互いに優しい眼差しで観察し呼吸を感じ取ることで少しずつ夫婦となっていくのだと思う。

他者への感心や尊重を今一度しっかりと見ていきたいと思えるそんな作品。

429本目