あまのうずめ

ぐるりのこと。のあまのうずめのレビュー・感想・評価

ぐるりのこと。(2008年製作の映画)
4.5
1993年、小さな出版社勤務の翔子は友人と足ツボマッサージを受けながら、夫とは大学時代からくっついたり離れたりの仲で、“うちは週3回”と笑う。その頃靴修理の店で働く夫カナオは客を食事に誘っていた。美大で日本画を専攻したカナオに日東テレビ勤務の先輩が法廷画家の話を持ってくる。帰宅したカナオに翔子は門限10時を破ったと責め、今日は“する”日だから決めたことは守ろうと迫る。


▶︎橋口亮輔が監督・脚本・編集・監修したヒューマンドラマで、映画スタッフが選ぶ2008年に最もスクリーンで輝いた映画の第2位(因みに第1位は『ダークナイト』)に選出された。第32回(2009)日本アカデミー賞では、木村多江が主演女優賞を受賞。

先日WOWOWで放送があり、公開当時から気になってた作品をやっと鑑賞出来た。ワタクシの中で邦画のベスト5に入る位好きだ!

夫婦の10年の日々をその時々の裁判と合わせ綴っている。自分に課したことを守る翔子といい加減にも見える飄々としたカナオ。産まれたばかりの赤ちゃんを亡くしたことで翔子は心を病んでいき、カナオは見守りながらも、どう言葉をかけていいのか分からずにいた。

経験者からみても鬱の病状や法廷シーンがリアルな上、二人の生育歴や家庭環境も挿入するなど、微に入り細に入り綿密に組み立てられている。エンドロールで監修を兼務していたと知り腑に落ちた。脚本があることも忘れる会話の中に、深いセリフも数多くあり胸を打つ。

あるシーンで音楽がつくのだが、それ以前に音楽が無かったことにハッとした位効果的だった。

木村多江やリリー・フランキーの演技に見えない熱演を、柄本明、倍賞美津子を始めとする役者陣が支えている。

内容だけでなく、稀にみる傑作を味わえた幸せが観終わった後も続いた。

WOWOWの『橋口亮輔監督特集』にて鑑賞。