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放浪記のodyssのレビュー・感想・評価

放浪記(1962年製作の映画)
3.6
【作家は売れてナンボ】

BS録画にて。
林芙美子(高峰秀子)が作家になるまでの貧乏生活を綴った小説の映画化。
私は原作未読。

昭和初期、行商人夫婦の娘として(ただし父は義理の親)育ち、やがて東京で一人暮らしを始めるが、不況の世の中、若い女が就ける職業は限られているし、収入もわずか。

本を読むのが好きで詩作もしていた彼女はやがて文学青年(仲谷昇)と同棲するが、彼には別に女がいた。
次に同棲した文学青年(宝田明)は、原稿がまったく売れず、妻にやつあたりするどうしようもない男。妻のほうも原稿はたまに売れる程度で売れっ子には程遠いのだが。

こうしてみると文学青年にはロクなのがいないということになりそうだけど、この二人は美男で、ヒロインには別に親切にしてくれる男(加東大介)がいるのに、なびかない。要するに面食いのヒロインにも問題があるわけなのだ。

……最後に、ようやく売れっ子になったヒロインは豪邸を建て、母を引き取って高価な着物を着せ、理解ある夫(小林桂樹)と暮らしている。

作家は売れるか売れないかで天と地ほども境遇が違ってくる。そのことがよく分かる映画になっている。

途中でヒロインの女給仲間を演じる紅園ゆりかがチャーミング。結局裕福な土建屋の囲われ者になるのだが、こういう真似、私もやってみたい(笑)。調べたら宝ジェンヌだったようだが、映画は本作しか出ていないらしい。知られざる美人女優と言うべきか。
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