都部

機動警察パトレイバー THE MOVIEの都部のレビュー・感想・評価

3.5
先見の明を作品の鋭利な口火として、明確な近未来性を展開する脚本はSFとしての重厚な魅力に溢れており、語り口こそ軽妙であるものの押井守その人の作風の硬質な点を纏め上げている印象が強い。

後の攻殻機動隊映画にも繋がる、既に現実には存在しない『誰か』の背を追うサスペンスフルな語り口は雰囲気充分で、次第に明るみになる陰謀の全容の見せ方などアニメのワクワクが詰まってるのが良い。
目立った部分では都市開発計画や機構の統一化をシニカルの一対象として語る格好良さも中々で、数多の思想に基づく指摘と電脳存在を通した哲学の開示はら心地の良い情報量の多さを意識したそれで耽溺への道を綺麗に舗装する手つきの鮮やかさも見事だ。

またセル画による街や風景の描写も優れており、90年代の郷愁心を煽り立てるようなショットの数々と瑞々しさのある生の言動が物語の空想性をより現実へと近づけて行く。当時は評価されなかったと聞く本作の問題提起だが、警鐘とはいつの時代も後からその響きの大きさがかようにわかるものなのである。
都部

都部