【再鑑賞】
ロボットアクションと社会派サスペンス、娯楽性と作家性の見事な融合を実現させた傑作です。
当時はまだまだニッチな分野だったコンピューターテクノロジーにまつわる見識を盛り込んだ先見的な物語は、日本のアニメがハリウッドのSF大作にも拮抗し得るばかりか、それらを凌駕するほどの独創性と完成度を有していることを証明してみせました。
ガラスケースに入った相撲取りの日本人形が飾ってある畳の部屋で、タンクトップ姿の理系オタクが扇風機にあたりながら電子機器を操作している世界観こそ、日本製アニメのあるべき姿なんだと誇らしく思えます。
一方で、朽ち果てた廃墟のイメージがアンビエントな音響と共に淡々と移り変わっていくシークエンスは、都市が内包する存在の曖昧さを、批評的な視点で描くこの物語の主題を象徴的に現しています。
実存や現実と虚構といった哲学じみたテーマは、押井作品ではもはやお馴染みですが、それをクライムサスペンスに落とし込み、ロボットアニメとしてパッケージする。
これもまた、日本製アニメが長い歴史の中で培ってきた多様性があってこそ実現可能な姿なのかなとも思います。