ひたる

機動警察パトレイバー THE MOVIEのひたるのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

観てよかった。事前知識無くてもめっちゃ楽しめた。押井守監督作品は「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」と「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」のみ鑑賞済み。前者は難解で理解できなかったが、後者はコミカルな世界観と程よいSFで大好き。今作は両者の中間に位置すると感じた。専門用語が多く設定を飲み込むまでには時間がかかるが、キャラクター達の言動はコミカルとシリアスを行ったり来たりで愛着が湧いた。
そして何より圧倒されるのは川井憲次さん手掛ける音楽。同じく彼が担当している「ワールドトリガー」のアニメ劇伴が大好きな身としては、全身で音を浴びれて幸せだった。戦闘時のワクワク感が半端じゃない。ただ強いて不満を挙げるとすれば、ラストバトル決着の余韻に浸る間もなく軽快な音楽が流れて大団円した点だ。ここだけ少し駆け足に感じた。尺の問題があったのだろうが、あと3秒でも沈黙が長ければ静と動のメリハリがついてもっと良くなっただろうにと悔やんだ。
作画も全体的に良かった。この頃の緻密な作画大好き。冒頭の戦闘シーンは砲弾飛び交う戦場に自分も足を踏み入れているような感覚に陥った。ポケモンショックなどの事例は知っているものの、フラッシュを多用する作品は何だかんだ初めて観たかも。目は疲れるけれど、臨場感を生む点では好きな表現だった。
ビル風の音がレイバーを狂わせるというアイデアはとても面白かった。人間が捉えられない周波数であるため、一見バグが起きたようにしか思えないというのは天才キャラも納得の犯罪方法だった。鑑賞中このアイデアに既視感があると思い、上映後一生懸命考えてみたら伊藤計劃の小説「虐殺器官」だった。久々に読み返したい。
ラストバトルのコックピットから抜け出して生身の人間としてトドメを刺す展開は熱かった。中盤あたりで老刑事が技術屋のおっさんと話してた、技術がどれだけ進んでも結局は人間次第みたいなセリフを体現するかのように、自機が暴走した隊員も含め戦っているのは、少し大きな鎧に身を固めただけのただの人間なんだと突きつける泥臭いかっこいい勝利だった。「技術に罪は無い。人間が善悪を決めるのだ」みたいなメッセージは何の作品だったっけ。それを思い出しながら観ていた。
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