Taisuky

風の丘を越えて/西便制(ソピョンジェ)のTaisukyのレビュー・感想・評価

5.0
配信にも無く探していた映画ですが、ここのレビューでYouTubeにあると教えてもらい30年近くの時を経てやっと観られました。当時、パンソリと言うものをこの映画で初めて知ったのです。そしてこの映画のテーマである「恨ハン」と言う概念も。ハンが心に無いと歌にならない、そしてハンを乗り越えた境地まで行け、なんていう師父の言葉。あまりに過酷で、むごい話ですが、芸に一生を捧げるとはこういう事なのかと心底感動したものです。当時、繰り返しビデオで観て、最後の歌が「沈清伝」である事は字幕から分かったのですが、途中で歌われるアリランが何なのか?分からずじまいで気がかりでした。でも、いい時代ですね、調べたらすぐわかりましたし、歌もいっぱいありました。歌は「珍島アリラン」6分に及ぶ長回しの歌謡シーン、本当に映画史に残る名シーンだと思います。『アリアリラン スリスリラン アラリガナンネー~』親子(血のつながりはない)三人の一番楽しかった思い出として描かれたこのシーン。やっぱり音楽の力は偉大です。何度観ても感動します。そしてラストの「沈清伝」を演奏する二人。会話も無く歌と太鼓で映画の幕を引く、こんな映画そうは無いですね。本当に涙が溢れます。そして、今回知ったのはタイトルの西便とは全羅道の一派と言う事。だから珍島アリランなんですよね、方言も少し分かって納得です。
最後に、この映画のヒットで伝統芸能再発見のブームがきたそうで、韓国社会にとってもエポックメイキングな映画だったようです。この映画が無ければ今のソン・ソヒもいなかったかも?と思うとやっぱり必見の映画ですね。
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