Ryo

十二人の怒れる男のRyoのレビュー・感想・評価

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
4.7
偏見は真実を曇らせる
ーーー陪審員8番

映画史でも名高い法廷サスペンス。
父殺しの容疑をかけられた少年の裁判で有罪が確定的と思われた中、たった一人の陪審員の言葉をきっかけに物語が急転していく。

ヘンリー・フォンダ演じる陪審員8番を始め、個性的な12人の陪審員たちはキリスト教における十二使徒が連想される。狭い会議室のみをロケーションとしながら、卓越した脚本によって片時も目を離すことができない。映画の質は脚本によって大きく左右されることを改めて思い知らされた。
陪審員たちの人間性によって生まれる「先入観」の恐ろしさと一般人が被告の命を左右することになる陪審員制度の重大さを説きながら、事件の全容が12人の検証によって詳らかにされていくスリリングな法廷劇は、メッセージ性と娯楽性の両方に富んだ、映画の神髄を感じられる。

現代の恐竜化した映画作品から一度距離を取って、温故知新の気持ちで鑑賞してみると新しい発見があるはず。まさに映画史に残る傑作と呼ぶに相応しい作品だ。
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