No.83[果たして何と比べて"別"だったのだろう]　30点

トーキー時代の到来によってサイレント期のスターを切り捨てたハリウッドは経営と製作の問題から既に舞台で力を付けていた俳優たちを採用することで確実な集客を目指した。本作品もそんな作品の一つであり、主演のウェスト作の戯曲『ダイヤモンド・リル』に基づく作品らしく、そのおかげもあってかデビュー間もなかったのに主演に抜擢された。ウェストが余りにもエロ過ぎてヘイズコード制定が早まったとされているが、個人的には全くエロさは感じなかった。というか体躯が厳つくて寧ろ美輪明宏にしか見えなかった。

物語的にも66分しかないのに退屈極まりないし最後の謎のどんでん返しからの展開は気色悪くて好みじゃない。ヘイズコード制定前ならもっと宇宙の果てくらいまで行けた気がする。そして、"わたし"が"別"だったものが何だったのかよく分からないんだけど、こういう適当な邦題は意外と好きだったりする。しかし、中身は空っぽなので明日には見たことすら忘れてそう。

追記
相手役が若かりし頃のケイリー・グラントで無駄にイケメンなのが可愛い。そんで本当の邦題は「わたしは別よ」である。

• #1001の映画ofOdessa

映画は、1890年代のニューヨークを舞台に、ナイトクラブで歌う主人公の女性が、自らの人生を切り拓こうとする姿を描いた作品。彼女は華やかな舞台に立つ魅力的で自信に満ちた存在であり、その輝きにひかれて集まる男性たちとの関係が物語の軸となる。富豪、芸術家、政治家など、彼女を手に入れようとする男たちの思惑が交錯するなか、主人公は誰にも依存せず、自分の声と信念を頼りに生きる道を選ぶ。恋愛や名声に揺れながらも、「私は別よ」と言い切る彼女の姿には、強さとしなやかさが宿っている。華やかさの裏にある孤独や葛藤を繊細に描きながら、女性の自立と表現の自由を力強く讃える本作は、時代を超えて共鳴するメッセージを放っている。こんな時代から、女性の自立に言及する作品が生まれていたことに大変驚く。

ヘイズ・コード記念碑──宝石と使用人に囲まれて暮らす酒場の女主人ルウ。ルウのグラマラスな肉体に引き寄せられて（？）何人もの男が彼女の部屋のドアをノックする。本作をきっかけに1934年に映画制作倫理規定管理局が設立されハリウッドにヘイズ・コードが敷かれるようになったらしい。本作がNGで『四十二番街』がOKなのは理解に苦しむが、たしかにフェリーニが好きそうな作品ではある。

【死ぬまでに観たい映画1001本（第五版）】
333/1001