おいなり

カールじいさんの空飛ぶ家のおいなりのレビュー・感想・評価

カールじいさんの空飛ぶ家(2009年製作の映画)
4.1
ファルコン&ウィンターソルジャーやってる時に、やたらと「新キャップがカールじいさんに激似でワロタ」みたいな感じでSNSで話題になってたので、なんか観たくなって観た。同じディズニープラスで観れますしおすし。



「カールじいさんの空飛ぶ家」というタイトルからは想像もつかないくらい重い冒頭シーンで、もうガッチリ心を掴まれてしまった一本。
ピクサー作品はたまに毛色が合わなくて、みんなが「よかった!感動した!」という作品ほどのめり込めないことが多いんですが、カールじいさんは文句なしに好き。
いろいろ感想を書きたい一方で、できれば未見の人には前情報なしで観てほしい。



ピクサーやディズニーアニメを観てるといつもいつも伏線とその回収が非常に計算されていて、だんだん「コレ終盤でまた出てくるなぁ」と言うのがわかるようになってくるんですが、今回はわかっててもジーンときちゃった。

風船で家飛ばすじいさんの荒唐無稽な冒険活劇の一方で、たまにすごく現実見せてくるその狡猾さというか。
すごくバカバカしいことをやっているように見えるのに、その動機が亡くなった奥さんの夢を叶えるためという切ないものだったり、夫婦の思い出が詰まった「家」を主人公にしながら最後にその価値観がグルッと転換してしまうところや……、形ある思い出も夢もとても大事なんだけど、もっと大切なものがあるよというのがすごくスマートに、押し付けがましくなく描かれていて、年食うほど刺さるものがある。
たぶん20年後に観たらもっと深くグサッとくると思う。

舌触りのいい砂糖菓子のような夢物語にしようと思えばいくらでもできると思うんですが、遠回りした末にたどり着くちょっとビターな味わいというのが、逆に心に残るものになってるなぁと。そういう厚みのあるストーリーテリングのうまさが、やはりピクサー作品らしい。
逆にその巧さが毎回毎回鼻につくというか、脚本書いたやつのドヤ顔が透けて見えるようで、そういうとこがピクサーちょっと合わないんだよなァという。



ただこういう作品って、いつも悪役が必要以上に悪い奴として描かれてしまいがちで、ちょっとかわいそうになってしまう。
彼は彼で夢に取り憑かれてしまった気の毒な男として、カールじいさんとは対比になってるんですが、なにもそんな性根の悪い奴にしなくてもよかった気はするんですけどね。
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