垂直落下式サミング

GODZILLA ゴジラの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

GODZILLA ゴジラ(1998年製作の映画)
4.0
厄災はポリネシアの核実験から産まれ出でた。
ゴジラの成り立ちを説明する序盤は、核の脅威を漂わせる雰囲気だが、中盤以降はニューヨークを舞台にしたモンスターパニックになるハリウッドSFらしい映画。
徐々に怪物の全容に迫っていく人間たちのドラマはなかなか見応えがあるし、違和感のない二足歩行をするCGの怪獣が緻密に表現された摩天楼や地下鉄などの街並みを破壊してゆく様子など、実際に本物の巨大生物が暴れまわってる様な錯覚を起こすほどにリアルな描写だ。確かに、あの移動速度でビル群のなかを動き回られたらどうしようもない。
日本オリジナル版は「得体の知れない魔物」で米国版は「未知の生物」と、日米で怪獣というものへの解釈に違いがあり、その確たる違いは着ぐるみとCGという点であって、素材に対するアプローチの仕方の対比は興味深くみられるが、一番重要な「自然が人間に復讐するかもしれない」という東宝特撮に通底するコンセプトがうっすらとしか感じられないのが、ファンをがっかりさせた要因だろう。
やはり、結局は物理的に打ち負かすことができてしまったり、怪獣が好んで人を襲い捕食しようとする描写が何回も入ることによって、「別物」にはなっているなと。
あの温厚なスピルバーグが、「私はこの映画を生涯観ることはない!」と怒ったことが有名な映画なのだけど、観てみるとモンスターパニック映画としては悪くは無いし、ストーリーが単純明快な一本道なので、エメリッヒ映画のなかではかなり完成度の高い作品だ。だけど、やっぱり「GODZILLA」という名前の持つ意味を理解していないというか、核開発という罪に無頓着というか、これじゃあ熱心なファンへの配慮が足りないと思われても仕方ない…。
この前の『ストーンウォール』がLGBTの人から、めちゃめちゃ批判されたことと似たものを感じたので、エメリッヒ自身、まだ自分の作品の何が人の精神を逆撫でさせるのかについて無自覚なのかも。やっぱ雑で無頓着なのは感心しない。