昨年満席で観れなかった名画座かんぺ大賞、噂に違わぬ大傑作。心が豊かにしかならないから困った。ATB「この広い空のどこかに」みたいな至ってシンプルな物語、観やすいカット割、ハーモニカ工場で日々を生き抜く労働者、それに交えてメインの若い男女の心臓が痒くなるような青春の恋、えぇ優勝です。冒頭、2階の窓を右から左へゆーっくりパンする伏線カット、実に味がある。右から左カットを何度かその後も人と生活の場面変化で使い、ラスト向かいの学校の少年たちにハーモニカ合唱をみせるやりとりを引きで、建物の全景がはじめてあらわになる神カット観れただけで心の底から満足…「熱愛者」でも家の構造を巧みに利用していた井上和男の力量がうかがえる。月光仮面と赤銅鈴之助少年の辻斬り、桑野・山本の主役コンビに対して交わらない渡辺・瞳コンビの温度差のある川辺の場面（良い）、かき揚げ美味そうに食べる山本豊三（鍋の真ん中に落とした玉子うどん食べたい）、極め付けは誕プレで千円貯めてオルゴールをあげるはずがまさかの桑野から逆プレゼント（なにその告白ずるい）で殿堂入りです。最後走り抜けて「完」は笑う。
当時の水門やまっさらな平野などのロケーションが仄かなヌーヴェルヴァーグ臭と、労働者がテーマなせいか少々のネオレアリズモ感を感じる…
「働く者がなければ　家はどうなる」の貼り紙が明日月曜を迎える自分に降りかかっている、、、オムライスは90円。

• #mingo2021

労働者の生活と恋、様々喜びも退屈も苦味も飲み込んで解き放たれるうたの一瞬。一階と二階、個室に窓に中庭のような運動場、極め付けの向かいに学校というハーモニカ工場のロケーションだけでもう勝ち戦じゃないか。「裸の太陽」を思い出す心の一本最高です。

早乙女勝元作の「ハモニカ工場」を馬場当と山田洋次が脚色、井上和男が監督した。桑野が勤めるハーモニカ工場での出来事。渡辺文雄は瞳と結婚したいが、低賃金で結婚できない。山本は、桑野に誕生日プレゼントを買うために残業する。それでも、プレゼントは買えなかった…。ちょっと社会派の入った青春映画。