こまち

大人は判ってくれないのこまちのレビュー・感想・評価

大人は判ってくれない(1959年製作の映画)
4.2
嘘は時々つく、本当のことを言っても信じてもらえないから っていう言葉が印象的。

主人公は学校でもやたら自分ばかり叱られ、家に帰っても怒られるし親は喧嘩している。
親は、夫婦関係があまり良くないことを子供に隠せているつもりなんだろうけど、子供って思っている以上に敏感で判っている。

急遽映画館に行った時だけ、やたら家族みんなで和気藹々としていたのが、限られた時間や場所でしか家族と過ごす楽しさを味わえない妙なリアルさがあった。

彼の衝動はそういった積み重ねの裏返しのような気がした。


とはいえ、親や先生の立場からすれば子供の非行や暴言には腹が立つし、やんちゃレッテルがついてしまうとつい怒り倒してしまうもの…なんだこの生意気な野郎め!って思う気持ちはすごく分かる。が、ここに登場する大人たちは子供がなぜそういう言動をするのか向き合うことは全くしない、なぜなら大人は判ってるから…実際は判った気になってるだけなのに。

邦題の「大人は判ってくれない」だと、子供目線から「だから大人は嫌いなんだ!何も判ってない!」っていう典型的な反抗児ぽい匂いがするが、ストーリー的には「大人嫌い!」ではなく「大人を頼ったって仕方ない、自分はこうやって生きるんだ」という強い意志すら感じる。こうやって生きるしかないという諦めもあるのかもしれない。
この自我の芽生えと、たまに見せる屈託ない笑顔や涙など健気な一面とのギャップが思春期らしい。

不良とか非行は悪いイメージがつくものだけど、全部が全部そうではなくて、もっと本質的に意味あることなのだと思った。
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