しゅん

紅の豚のしゅんのレビュー・感想・評価

紅の豚(1992年製作の映画)
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飛行艇が水面を駆ける時の水の質量感ある跳ね方、群像を上から描く時の多方向に放埒な動き、雲から差し込む光の濃淡のバリエーション。絵を観てるだけで思わず笑えるし泣けてくる。女たちが飛行艇を直しているとき、ポルコは何もせずにタバコを蒸して座ってるだけなのかと思いきや、左手でゆりかごを揺らしている。画面に赤ん坊を映さない一瞬のショットに思わずジンとくる。省略こそが速度と思いやりを生む。それがこの映画におけるロマンスであり、観客は精密に描かれた飛空艇の動きと思い切った省略の同時生成に恋する。画面の奥に向かう時のスピード感といったら!フィオが泳ぐ時ですら、奥に向かうに連れ飛距離が増している。古き良き時代のロマンスでもなんでもなく、今観て手本にすべき作劇と動画。前半の方が後半より面白いが別に構わない。端的に最高。
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