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まぼろしのkojikojiのレビュー・感想・評価

まぼろし(2001年製作の映画)
3.9
No.1532 オゾンー7(2000年作品)3/31
2023.11.28視聴 

 ちょっと前に、忽然と消えるサスペンスを「忽然サスペンス」と名付けて、「こんな作品がありますよ」とレビューしたことがあった。 
 この「忽然サスペンス」は案外、皆さんに人気があるようで、コメントもいただいた。
どんな作品があるのか?

・バニーレイクは行方不明
・バルカン超特急
・ロストボディ
・フライトプラン
・彼女が消えた浜辺
・ザ・バニシング消失
・プリズナーズ

そしてこの映画もまた、「忽然サスペンス」と言えるかもしれない。
オゾン監督作品は私が観てきた作品はどれもサスペンス仕立てで、この作品もその系列にある。スリラーと分類されているが、サスペンス風味はしっかりある。
何と言っても物語の初っ端に主人公の夫が消えるのだから。

マリー(シャーロット・ランプリング)とジャンは結婚して25年になるが、子供がいないものの幸せな生活を送っている。毎年フランス南西部ランド地方の別荘で過ごしていた。今年もまた同じようにバカンスを楽しみに来た。砂浜、二人はタオルを敷いて日光浴をしながら昼寝をしていた。
夫のジャンが「ちょっと泳いでくる」という。ところがその表情は何だかおかしな表情なのだ。不安げで、こころここにあらずというような落ち着きのない表情。
マリーが目覚める。横をみると夫はいない。そうか、泳ぎに行くと言っていたなと思い出し、起き上がって砂浜を見ると、大きな波が繰り返し打ち寄せている。
海には誰の姿もない。
忽然と夫は消えた。

ここまではサスペンス、この後スリラーへ展開していく。

パリに戻った彼女の生活は、夫が消えたことを完全に否定していて、私もどう言うことだろうかと戸惑ってしまった。
夫がいるようないないような。

そしてそれは彼女の心の中に入り込んで、「まぼろし」をみていることがわかる。
人間の心理状態なんて、実際こんなものだろう。思い込んでしまうと、見えないものも見えて、見えているものも見えなくなる。それを交差させると独特の世界観が広がる。

オゾン監督はこの作品を撮って、その面白さに気づいたのかもしれない。
しばらくそんな作品を何本かとっているが、この映画もその一本。私はこの路線の監督作品が好きだ。

・まぼろし(2000年)
・スイミングプール(2003年)
・二重螺旋の恋人(2017年)

まだあるかもしれないが、思いついた作品はこれだけ。どれも面白い。因みに「17歳」でもまぼろしが出てくる。

シャーロット・ランプリングの内に秘めた異常性が垣間目見える白目が多めの眼差しが如何にもまぼろしをみているようで、この映画は、彼女でなくては撮れないと思わせる。それが「スイミングプール」へつながっていく。
現実とまぼろしの間(はざま)、危うい人間の心理。
オゾン監督は面白い。
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