千年女優

クリスマス・キャロルの千年女優のレビュー・感想・評価

クリスマス・キャロル(1938年製作の映画)
3.5
19世紀、クリスマスイブのロンドン。傲慢な守銭奴として有名な会計事務所経営の老人で、経済的事情から結婚を躊躇う甥フレッドの訪問を受けたエベネーザ・スクルージ。甥の食事の誘いを断った上に事務員ボブを解雇した彼が、亡き旧友ジェイコブの霊の差し金で過去・現在・未来へ連れられて自らを省みる様を描くファンタジー映画です。

ヴィクトリア朝期を代表するイギリス人小説家チャールズ・ディケンズが上梓してこれまでも様々な形で映像化された「クリスマス」を象徴する小説をメトロ・ゴールドウィン・メイヤーが映画化した1938年公開のアメリカ映画で、エドウィン・L・マリンが家族向けに制作した物語が評価されて主演ジナルド・オーウェンの代表作となりました。

家族向けという製作陣の意向もあってイギリスの階級社会を皮肉るチャールズ・ディケンズ節は抑え、70分弱のコンパクトな尺でクリスマスだから許される「奇跡」をマイルドに描きます。主題のためとは言え人生の大半を否定させるのは些か残酷ですが、モノクロと相性の良い雪がよく映える、「人は変われる」というエールを送る一作です。
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