MasaichiYaguchi

ワイルド・スタイルのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ワイルド・スタイル(1982年製作の映画)
3.8
1982年のニューヨーク、サウス・ブロンクスを舞台に、一人のグラフィティアーティストの生き様を描いたドキュメンタリードラマは、それまで世の中に存在しなかった全く新しいサブカルチャー、DJ、ラップ、ブレイキン、グラフィティを描く。
主人公のレイモンドは謎のライター “ZORO”として、深夜の車両基地へ忍び込み、地下鉄にグラフィティを描いていた。
“ZORO”のグラフィティは評判を呼んだものの、違法行為のため正体を明かせずにいたが、レイモンドは新聞記者ヴァージニアと出会い、仕事としてグラフィティを描かないか、と誘われたことで転機を迎える。
このドキュメンタリードラマの製作の切っ掛けは、ニューヨークに移り住んだばかりの監督を務めたチャーリー・エーエーハンが、公営住宅地の壁に描かれたリー・キノネスによるグラフィティを目にしたことに端を発する。
その後、チャーリーはリーと知り合いとなり、更にフレッド・ブラスワイト a.k.a. Fab 5 Freddyと出会ったことで、「ラップ音楽とグラフィティを融合させた映画」作りに繋がっていく。
このFab 5 Freddyが軸になって人と人とが繋がって、地下鉄やアンダーグラウンドで活動していたグラフィティのカルチャーと、パーティで活動していたDJやMC、ダンサーのカルチャーが融合した映画となっていく。
この映画が日本初公開した1983年には、未だ「HIPHOP」という言葉も存在していなかったので、私も含めた当時の若者にとって如何に“革命的”だったのかが分かると思う。
チャーリー監督は、「HIPHOP」について「最もダイレクトに人々の心を掴めるカルチャーなんだ。自分自身をオープンに表現することができ、また、大人ではなく子どもたちによってつくられたものだった。」と述べ、更に「子どもたちの表現力や感受性、許容力を育て、またそれらの力を使って進むべき道筋を知る上で、とても大事な役割を担った。それがヒップホップが、今日もとても重要とされている理由なんだ。」と結んでいる。